妙義滑落事故遭遇記録

2017.08.05(土) 日帰り

チェックポイント

DAY 1
合計時間
2 時間 44
休憩時間
59
距離
2.6 km
のぼり / くだり
474 / 456 m
30
1 3
21

活動詳細

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いたずらな気持ちでこのような報告を挙げるつもりは毛頭ありません。 これはこの日私が遭遇した妙義での滑落事故の私が知る限りの一部始終です。 なにかしらの啓蒙・なにかしらの参考にと思い投稿させていただきます。 なお富岡警察署への聴取等への協力は惜しみなく行い下山後も二度ほど状況確認の問い合わせをいただきました。 当日は元からのプランもなくまたお天気もすっきりしないまま朝食を終え気づけば時刻も8時となっていました。 こんなとき行くところは一箇所しかありません、妙義です。 前日から準備してない時のいつものことであれがないこれがないと準備に手間取り家をでたのは9時過ぎでした。 私は妙義神社周辺の駐車場の様子や歩いている登山者などでその日に妙義登山に来ている方(数)の大体の察しはつくのですがこの日も少ないだろうなーと言うのが駐車場に着いたときの第一印象でした。 案の定神社内では登山者の姿はなし、ただ大の字には人の姿が確認できました。境内を登り上げ登山口に到着すると工事中で通行できなかった木階段部分が通行可能になっていました。私は工事中の迂回路の方が通行しやすく気に入っていたのですが久しぶりでしたので通常の木階段ルートから登ることにしました。 堰堤のある小さな沢を渡る手前で早速ヤマビルのお出ましです。今日は直近の天候から100%ヤマビルには取り付かれるだろうとは予測していましたが、今までの経験上ここでヒルのお出ましは”早速”過ぎます。これが何を意味しているかというと結構登山者が入っている=第一印象ハズレってことではないかと… ソロで早めの時刻(山に入るのが早い方)だとヒルに取り付かれにくいのは経験上知りえていましたが、人がそこそこ入った後だとヒルが活発に活動し始めるようで取り付かれやすくなります(グループだと2人目以降が取り付かれやすい)。 そこでいつものスプレー養生して先に向かいますとすぐ先でソロの先行者に追いついたのですが、足元にはヒルが2匹!伝えると靴の中にも既に… 片足だけで計5匹目視確認できました。スプレーをして差し上げて先に進みましたが両足推計で10匹は取り付いていたのではないでしょうか。 とりもなおさずこの時点でこの先にもそこそこ登山者がいる事が予測されました。先行者が居るということは登山道崩落等の可能性は低い、しかし落石や滑落(もちろんこの時点では予想だにしていませんが)に巻き込まれるということは考えられる。ソロで妙義に入ることの多い私は常にそのようなことを念頭に置きながら歩いています。スライドの際は先行者がいらっしゃるかどうかは大概質問させていただいてます。 大の字前で先ほどの一人をパスした辺りで下界のサイレンの音がとても気になっていました。「ヘリの音じゃないんで滑落とかじゃないと思いますけどねー」などと会話して、大の字基部を過ぎて少し行ったあたりでヘリコプターの音が聞こえてきました。正直妙義では救助ヘリは日常です、私は3週連続妙義で救助と思われるヘリに遭遇したこともあります。音がどんどん近づいてきます、どこだろう?大の字(当日は立ち寄っていない)か奥の院かそれ以外か… この時点で私に出来ることといえばヘリから見える位置になったら「ここではないです」と合図をするくらいでしょうか。しかしこの時期妙義では稜線に出なければ上空の視界は効きません。かなり音が近くに聞こえますがヘリの姿かたちはみえません。音からホバリングではなく場所を探しているような感じでした。 ずっとヘリの音を聞きながら辻の分岐を通過して縦走路へ向かうとすぐ先の鎖場で三人組に追いつきました。「ヒル大丈夫です?」「いやー・・・」またまた早速、臭いですよ!と断りながらスプレーしてあげます(その先にも先行者いる感じかなーとか思いながら)。「さっきからへり気になりますねー、探してる感じですねー」と伝えましたがこのパーティーはヘリ・滑落には無関係のようです。 先を譲っていただき奥の院の手前、ちょっとしたステップがきられた岩場で奥の院に先行者数名が確認できました。 その岩場の上部からこちらをのぞいてる方がいます、その方が私に「警察の方ですかー?」 ヘリに何かしら関わってる方だとすぐに察知できました。一部不確かですが出来る限りその方からその時点で聞いた事を書き留めると 「奥の院の上部から一名が滑落、(奥の院取り付き部分でも止まらず)その時私がいた岩場の奥の院にむかって右側の斜面にまで滑落し、そこに沿った倒木付近でいったん止まったもののさらにその下に滑落、へりはその時奥の院にいた先行パーティが呼んだらしい」 その斜面は登山道ではなくザイルでも持ち出さない限り進入は危険(当日ザイル持参なし)、極力近づいて覗き込んでも滑落者の姿無し! わたし大声には自信あるので「声出せますかーー、聞こえますかーー」渾身の大声で数度叫びましたが反応なし。さらに下の方へ滑落しているのは間違いないと考え探しに下りました。ただし当日のスリッピーな状況でザイルもなしに登山道を離れるのは危険すぎます、登山道沿いに下り滑落した斜面の下と思しきところへ向かってみます。先ほど追い越した三人組ともすれ違いますが簡単に状況説明だけして先を急ぎます。まもなくヘリの音が遠ざかる感じがしたので大体の場所を伝えるべく110番に通報、電波状況悪く不通の後折り返しの電話をキャッチ 「妙義で滑落、場所は…」「その件はもう承ってます」「ちがう!ヘリがこちらを分からないようだが場所を…」結局噛み合わないまままた電波切れ。 そうこうしているうちに奥の院下の斜面のさらに下側と思われるところへ到着。そこは岩の裂け目で(2枚目の写真)、登山道から見上げた感じでは途中で止まってる様子も下まで落ちた様子もなく、その時はまさか裂け目の下部まで滑落されているとは予想だにしませんでした… どこか途中で止まってるのだろうか?へりの音は完全に遠ざかり途方にくれていると、先の3人組が下ってきました。 「どこかで止まってるんでしょうか、ここまでは落ちてこないですよねー…」そんな会話をしているときその裂け目に向かううすーい踏み跡を見つけました。ほんのなにかしらでも見えてくるのかなとの思いでその踏み跡をたどり裂け目に近づいてみると… いらっしゃいました、とても直視はできませんでしたがあきらかに瀕死の状態でした。 わたしはとっさに大声で「ドコモの方いますかー!すぐ通報してくださーい!」と叫んでいました。 三人組の一人がすぐに携帯を取り出し通報してくれました、そして三人組ところへ戻ると別の一人の方が滑落された方の確認に行ってくれました… が、状況は変りません。 どのくらい待ったでしょうか、その間に私に最初に状況を伝えてくれたソロの方、そして最初に通報した奥の院に取り付いていた三人組が下ってきました。状況を話し発見したわれわれ4人とソロ男性はそこで待機、初期通報した3人組は下っていきました。 しばらくして警備隊の方が登ってきました、第一声は「ご協力ありがとうございます」 その後状況を話しましたが警備隊の方の我々への対応はとてもてきぱきとしたものでした。 滑落者の確認においては「失礼いたします…」「全身打撲、全身骨折…」との声が聞こえてきました。 「下で署のものが居ますので連絡先・状況を聞かせてください」「登山を続けられる方は先に行ってくださってかまいません」 誰一人先に進もうとはしません。それぞれが手を合わせた後下山を始めます。下山の間も警備隊の方が続々上がってきます。先行の方は軽装備、後続の方ほど重装備(登攀具・救助用担架)でこられる印象を持ちました、全10名くらいいらしたでしょうか。 下山後妙義神社境内でそれぞれが連絡先と状況報告をしましたがその間ヘリが再びやってきてホバリングしている様子が伺えました。 聴取のあとそれぞれの登山者はお互い挨拶してそれぞれ帰っていきました。 思うこと… 当初滑落されたのは若い方のようでしたと滑落を目撃された複数の方に聞いていましたのと滑落後発見した際に膝下が露出していましたので勝手に若い方と思い込んでいました。トレランの方か?でも誰も抜かれたとは言っていないのでトレランじゃないのかな?若い(慣れない?)方が見晴らし辺りまで行った帰りに下り途中で滑落されたのか?等々勝手に想像していたんですが後の報道では全く違いました。確認されない想像など全く無意味でした。 滑落現場は奥の院の鎖場のさらに上の鎖のない部分からと言うことでした。妙義では鎖場以外でも決して気を抜けませんが奥の院の上は難関突破のあとで気を抜きやすくなりがちです。が、その部分もとても急で危険です。私もそこで「おっとっと…」と言う経験が何度かあります。以前の滑落事故の影響か奥の院上部のトラバース部分の通過を慎重にされる方は多いように見受けますがその先の鎖ない部分も大変危険です。十分な注意が必要です。 この日私が接した登山者の方は装備やお話から皆それぞれ経験を積んだ方々とお見受けしましたが、そのような方でも妙義では場合によってこのような事故を起こす可能性があります。私も決して過信はしていないつもりですが今後も十分注意を払おうと思いました。 ※ 投稿後一部の分かり辛い部分を修正していますが本文内容は特に変更していません。

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