【燕岳②】富士山と燕岳の二重奏

2017.10.09(月) 日帰り

チェックポイント

DAY 1
合計時間
6 時間 43
休憩時間
1 時間 42
距離
8.2 km
のぼり / くだり
281 / 1533 m
5
1 26
2 53
1

活動詳細

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≪コース≫ 4:55燕山荘-5:25メガネ岩(休憩)-5:55メガネ岩発-6:32北燕岳(食事)-7:04北燕岳発-7:28北燕岳稜-8:35東沢乗越-9:23西大ホラ沢出合-10:30ブナ平-11:39中房温泉登山口 ≪歩行時間≫ 下り=5時間42分(燕山荘-中房温泉登山口) 夢を見た。どんな夢だったかは覚えていない。でも何となく幸せな夢だったような気がする。満ち足りた気分で寝ていると、周囲でガサゴソと音がしてぼんやりと目が覚めた。スマホを見ると午前4時15分。もともと4時30分に起床するつもりだったから、このまま起きてしまおう。すでに同じ部屋の人たちはあらたか起きていて、登山の支度を始めていた。いつもながら山の朝は早い。 売店でお弁当を受け取ると、笑顔で「いってらっしゃい」と声をかけられた。そうか、これで燕山荘ともお別れか。そう思うと、とても名残惜しく感じられる。自然への慈愛とホスピタリティーにあふれたいい小屋だった。混雑していたにもかかわらず寝るスペースも十分あって、ぐっすり眠ることができた。 4時55分、ご来光を拝むため燕山荘を出発する。北燕岳、東沢乗越を経由する周回コースで下山する予定だ。昨日はポカポカ陽気だったが、さすがに早朝の山は寒い。山頂に近づくにつれ、風も強くなってきた。頂上はさほど広くなく混雑が予想されたので、メガネ岩の手前で日の出を待つことにした。夜が白々と明け、マジックアワーが始まった。槍ヶ岳が眼前に迫り、遠くに富士山の頂きが浮かび上がる。山に登った者だけに与えられる特別なご褒美である。 5時48分、ついに太陽が雲の上に姿を現した。朝日を浴びて槍ヶ岳の山肌がほんのりと赤く染まる。心の中でバンザイを叫び、山の神様に感謝の気持ちを捧げる。燕岳を通り過ぎ、北燕岳へと向かう。山頂すぐ下の岩陰で強風をよけながらコーヒーを淹れ、朝食のお弁当をいただく。北燕岳(標高2,750m)の頂上から富士山と燕岳が並んで見える。日本でいちばん美しい山と日本でいちばん好きな山が奏でる、至高の二重奏(デュエット)である。 昨日に続き、天気は申し分ない。奇岩、巨岩の傍を通り、尾根伝いに気持ちよく歩く。槍ヶ岳も穂高連峰もずっと見えているので、ありがたみが薄れてしまいそうだ。ただ北燕岳から先には登山客の姿がまったくない。餓鬼岳と東沢乗越を示す標識で右に折れ、長い長い急斜面を下る。急激に気温が上がり、上半身が汗ばんでくる。半袖のTシャツでもいいぐらいだ。8時35分、餓鬼岳との分岐点となる東沢乗越(同2,253m)に到着。まだ山と山の間に富士山が見える。 さらに急坂を下っていくと、赤や黄に色づいた木々が増えてくる。西大ホラ沢出合で中房川と合流。しばらく川の流れに沿って歩く。東沢ルートは倒木が多かったり、川の斜面が崩落していたりして、かなり荒れた印象だ。ルートファインディングが難しく、何度か迷いそうになった。歩く人も少ないのだろう。単独行の2人とすれ違い、餓鬼岳から下りてきたご夫婦に追い越された以外、誰とも会わなかった。 だんだんと足が重くなり、踏ん張りが効かなくなる。飛び石伝いに川を横切った際、足を滑らせて左足が膝近くまで水に落ちてしまった。靴の中までびしょ濡れである。情けない。ゴールが近づくにつれ、紅葉がさらに鮮やかさを増す。11時39分、中房温泉登山口に到着。バスの待ち時間を利用し、大胆にもバス停でペペロンチーノを料理して食べる。 午後0時35分発のバスで穂高温泉の駐車場へ。「しゃくなげの湯」で入浴し、晩酌用に「大雪渓」大吟醸美山錦の720ml瓶(3,086円)を買う。昨晩、燕山荘でこれを飲みたかったが、自重したのである。白馬村のパタゴニア・アウトレットに立ち寄り、ニット帽を購入。大した疲労もなく、金沢へ無事帰還する。これ以上はないという絶好の条件で、念願のアルプスの女王に対面することができた。今回の山行は生涯忘れられないだろう。

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