二ツ岳〜エビラ山への縦走(撤退)

2015.08.23(日) 日帰り

チェックポイント

DAY 1
合計時間
8 時間 17
休憩時間
1 時間 21
距離
10.0 km
のぼり / くだり
1075 / 1101 m
1 11
1 7
2 47
54
48

活動詳細

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いつかは挑戦してみたい「二ツ岳〜権現越」の縦走。 四国で最も峻険といわれるこの難コースに挑むには、今の自分では力不足。今回は偵察を兼ねて、まずは二ツ岳に登る事にした。 登山口は南側の肉淵登山口を選択。 肉淵登山口までの林道は舗装がされており、普通車の乗り入れも可能。登山口下に3台、林道脇に2台程駐車する事ができる。(後から聞いた話だと、北側の中ノ川登山口はアクセス不可になっているとの事) 肉淵登山口に7時に到着すると、すでに一台の車が駐車していた。初めて登る山は先行者がいると安心する。身支度を済ませ7時15分に登山開始。 登り始めは植林帯の中を急登するのでスローペースを心掛ける。今日は気温も丁度いい感じなので、気持ちよく登る事ができそうだ。15分程歩くと開けた場所に出る。朝の陽射しが非常に心地よく、気分も上々。何より、今回は時間に余裕があるので精神的に楽だ。「そろそろマゾ登山から卒業か…⁈」なんて考えながら、景色を楽しんだり、自撮りをしたりとゆっくりと歩いて行く。途中、ミニ三脚を落としてしまい、捜索の為に引き返すというアクシデントもあったが、ほぼコースタイム通り1時間15分で「峨蔵越」に到着する。ここまでの登山道は、一部崩れていた場所もあったが、危険箇所は無く快適に歩く事ができた。 さて、ここからが本番である。峨蔵越から二ツ岳山頂までは、ロープやハシゴの設置箇所があり、非常にキツいと評判の登山道である。どうやら夜明け前に雨が降ったようで、路面は濡れており岩場は歩きにくそうだ。 峨蔵越から歩いて間もなく藪漕ぎの洗礼を受ける。虫が嫌いな乙女チックな僕にとって、この藪漕ぎという行為はストレス以外の何物でもない。虫だけでなくマムシの存在も頭に入れて慎重にゆっくりと進んで行く。藪漕ぎから解放されると次はロープやハシゴが現れる。決して難しくはないのだが、濡れた岩は滑りやすく、三点支持で慎重に進んで行く。 峨蔵越から40分程で『鯛ノ頭』直下に到着。鯛ノ頭には下山時に登る事として休憩もソコソコに先に進む。 ここからが核心部。 少し進むと有名な「ここから先は命懸け」の看板が現れる。もはや歩くではなく登るという動作になる。ロープや木の根を掴み、全身を使って登って行く。高度感こそないが、石鎚山の東陵ルートのような感じだ。 鯛の頭から約30分、登山口から約2時間30分で二ツ岳山頂に到着する。 山頂に先行者の姿はなく、どうやら権現越に向かう縦走路に進んでいるようだ。山頂の三角点付近は狭く展望がないので、少し奥にある赤石山系を一望できる小さなデッキ(岩の上)で昼食を摂る事にする。この場所からはエビラ山〜東赤石山の稜線を眺めることができた。 しばらくすると、後続者が三角点付近に到着し、また、先行者も山頂に戻って来たようだ。二人は三角点付近で話をしているので、僕の存在に気づいていない。先行者はエビラ山の手前のイワカガミ岳付近で引き返して来たらしい。何カ所か迷いそうな場所はあるものの、踏み跡と赤テープがあるので、イワカガミ岳までなら難しくはないという話をしている。後続者はエビラ山まで行く予定との事だ。 この時点では、僕は昼食後下山しようと考えていたのだが、私の存在に気づいた先行者が「まだ時間が早いんで、あなたもエビラ山まで行かれてはどうですか?」という言葉を投げかけて来るではないか。 きっとこの方は「あなたマゾなんだろ!? マゾなら黙って行けよ!」と言いたかったのだと思う。 このような勝手な解釈をもってして、実は行ってみたかったエビラ山への縦走路に足を踏み入れることにした。 毎回であるが、これが間違いであったことは言うまでもない。 後続者はすでに出発したらしく、すでに姿はない。先に歩いている人間の存在は非常に心強い。 先程の先行者が言うように、二ツ岳からイワカガミ岳までは踏み跡も付いており、また、酷い藪漕ぎもなく快調に進む事ができる。ただ一カ所だけちょっと難しい岩登りがあった。ロープも設置されているので登れない事はないが、岩が滑り易く高さもある。ロープだけでなく、木を掴みながらよじ登る必要があった。 イワカガミ岳から先は厳しかった。とにかく藪漕ぎの連続でルートが分からない。とりあえずエビラ山の方向に伸びている踏み跡と赤テープを捜すといった作業ををしながら前に進む。そうこうしているうちに先行者に追いつき、一緒にエビラ山を目指す事にした。この方もエビラ山までのルートは初めてで、僕と同じく苦戦しているようだった。二人で必死に踏み跡と赤テープを捜し、薮を掻き分け、岩を乗り越え、そして次のピークを目指して進んで行った。そうした作業を3回程繰り返し、やっとエビラ山手前のピークに到着する。 ここで時刻は11時50分。二ツ岳山頂から約1時間。恐らく通常なら約30分でエビラ山の山頂に到着するのであろうが、山頂までのルートは深い薮に覆われているようで、この場所からルートを確認することができない。 先行者と相談した結果、「雲行きも怪しいし、薮が深そうなので30分では登れそうにない」という理由で、「勇気ある撤退」を選択した。目指すピークを目前にして引き返すのは本当に悔しいが、縦走用の装備もしていないから仕方がない。僕はエビラ山をもう少し眺めることにして、先行者に先に引き返してもらい後から追いかける事にした。 「来た道を引き返すだけ…」 そういう考えもあって単独行動することにしたのだが、この考えが甘かった。僕は先行者の後ろを歩いていた。一緒にルートを捜して歩きはしたのだが、前を歩くのと後ろを歩くのとでは、見える風景が違う。後ろを歩いている人間は、自然と先行者を目で追っているのでルートの記憶が薄いのだ。結果、何度もコースを見失ってしまい「遭難」という文字が頭をよぎった。今考えると、来た道だしGPSがあるので、冷静に対処すれば何てことはないのだが、人のいない奥深い山でルートを見失うことは、想像以上に精神的ダメージを受け冷静でいられなくなる。ただ幸いにも、前赤石で同じような経験をしていたので、冷静になることが重要と自分に言い聞かし、無駄に動かず、次に進むべき道を探してから歩くことができた。 何度か足を滑らし転倒もしたが、幸いにも怪我をする事はなかった。怪我をしたら進むことの出来ないような難ルートなので、とにかく慎重に進む事を心掛ける。こうして四苦八苦しながら、やっとの思いで二ツ岳に戻る事が出来た。 山頂直前で先行者に追いついたのだが、食事を摂っていなかったようで、スタミナ切れを起こしかなりバテていた。お互い「登山」に対する意識が甘かったと二人で反省した。 何はともあれ今となっては「勇気ある撤退」を決断して本当に良かったと思う。 二ツ岳山頂でゆっくりと休憩したかったのだが、まだ、鯛ノ頭に登らなくてはならないので、一人で下山を開始する。 鯛ノ頭までの下りも気を抜く事が出来ない厳しい道が続く。怪我のリスクは登りより下りの方が遥かに高いので、ここも慎重に下る。 鯛ノ頭はピークでなくただの岩なので取り付き場所の標識はない。取り付きまでは、また藪漕ぎをしなくてはならない。こうも藪漕ぎばかりだと、もう嫌いも何もなくただヤケクソで前に進む事ができる。取り付きからは設置されたロープを使って15メートル位の高さを一気に登る。巻き道もあるのだが、高所恐怖症の方や岩登りが苦手な方は鯛ノ頭には登らない方が賢明かもしれない。 鯛ノ頭で二ツ岳をバックに自撮りを試みるが、ここで「ガス男」の本領を発揮してしまう。僕の後方には峻険な二ツ岳が写っているはずなのだが・・・、真っ白な背景。暫く待ってもガスが取れないので諦めて下山する事にした。 ここからはハイピッチでと思ったが、この山はそうはさせてくれない。岩や木の根などの障害物が邪魔をする。そして濡れた岩肌が非常によく滑る。とにかく慎重に下るしかないのだ。 結局、鯛の頭から30分かけて峨蔵越に到着する。ここで膝が痛み出す。疲労もあるが、藪漕ぎ中にヒザを岩で 強打してしまい、その痛みが一番の原因のようだ。しかもザックの横ポケットに挿しておいたトレッキングポールの先がなくなっている…。エビラ山への縦走中、何度も木に引っかかったので、その時に外れたようだ。ズボンにも穴が開いているし、災難続きである。 膝の痛みと格闘しながらも何とか登山口まで帰ってきた。峨蔵越から50分もかかってしまった。 結局、登りに5時間(休憩あり)、下りに3時間30分かかった。 今回の登山では、失った物も大きいが、得た物も大きい。 自分は経験も技術も無いという事を身をもって再認識する事ができたことが一番の収穫である。 登山スキルを身に付け、いつか「二ツ岳〜権現越」までの縦走に挑戦しようと思う。

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