最高の晴天!北アルプス表銀座・常念山脈縦走(燕岳~常念岳)

2015.04.25(土) 3 DAYS

チェックポイント

DAY 1
合計時間
8 時間 5
休憩時間
1 時間 33
距離
6.5 km
のぼり / くだり
1437 / 190 m
DAY 2
合計時間
7 時間 39
休憩時間
57
距離
9.8 km
のぼり / くだり
671 / 917 m
30
22
33
1 4
38
1
41
6
1 25
DAY 3
合計時間
5 時間 49
休憩時間
1 時間 14
距離
6.9 km
のぼり / くだり
420 / 1538 m

活動詳細

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【はじめに】 福岡から北アまでの移動手段はLCC(Jetstar)を使うことが多い。セール時に購入すれば、往復なんと6000円程度。名古屋⇔穂高のJR代が14000円ほどなので、交通費で2万円の計算だ。今回は山小屋2泊の山行なので、やはり遠征にはそれなりのお金がかかる。 お金で済むことなら、それはそれでいい。山は、お金では済まないことの方が多いから。今回のような計画で一番気になるのは、天気と体調だった。4月下旬とは言え、一たび天候が荒れれば厳しい冬山となるのがこの時期。僕は心から山の神様に祈った。これまでのコトは悔い改めます、どうか山行3日間をお天気にして下さい。膝の痛みやお腹のゆるみがありませんように…。 【4月24日(金)】 仕事を終え、福岡空港を15時45分に飛び立ち、穂高駅に到着したのが21時30分すぎ。既に宿にチェックインしていた今回の相棒・つるちゃんと合流し、ビールを飲みつつ明日からの計画を確認しあう。 単独行が多い僕にとって、3日間も同行者がいるという事には若干の不安もあった。体力やペースの違い、緊急時の判断や、女性の好みなどで意見が分かれたり、喧嘩したりしないだろうか? 【4月25日(土)・前半】 さあ、いよいよ本番初日!素晴らしい晴天に恵まれた僕らは、穂高駅前から中房温泉登山口までバスで移動した。マイクロバスの乗客は12~3名だろうか、思ったほど多くは無かった。 「北アルプス三大急登」と呼ばれるこのルートは、しかし実際にはそこまで厳しいものじゃない。汗をかかない、息を切らさないスローペースで登れば、山歩きは本当に楽しいものだ。でも、相棒のつるちゃんには物足りないペースだろうか? 第一ベンチの先から雪だったが、富士見ベンチまではノーアイゼンで登る。ほどなく合戦小屋に着くと大勢の登山者が休憩をしていた。空いているベンチに腰かけると、向かいの初老の男性が話しかけてきたのでお返事差し上げる。話題がカメラになったところで彼は熱弁をふるいだし、ついにはつるちゃん自慢の PENTAX K-S2 を勝手に触りだした。あの時は、彼を押し付けてその場を逃げ出して悪かった、つるちゃん(笑)。 春山登山教室の一行を率いている大天荘の榊さんを見かけたので挨拶し、合戦小屋を出発。この先から森林限界を超え、美しい雪山の絶景が広がった。合戦沢ノ頭まで直登する冬ルートはそれなりにキツイけれど、姿を見せ始めた槍の穂先にテンションがあがる。合戦尾根に出れば、今日の目的地・燕山荘も見えた。小屋の前には雪が無いと聞いていたので、早めにアイゼンを外し登山道の保全に努める。 燕山荘に到着したのは15時ちょうど、登山口から休憩込みの5時間40分で予定通りだった。つるちゃんは余裕のようだが、このペースでも良さそうだ。空身で燕岳を往復し、写真をたくさん撮る。晴天無風、360度の絶景が広がる燕岳山頂でつるちゃんも興奮気味だ(笑)。もちろん僕も大興奮だ(笑)。 明日歩く常念までの縦走路がくっきりと見える。その奥に穂高・槍・笠、裏銀座の双六・鷲羽・水晶に野口五郎、さらには立山・剱、北に針ノ木・蓮華に鹿島槍まで、これでもかと言わぬばかりの北アルプスオールスターズが見えた。 【4月25日(土)・後半】 燕山荘はこの日が小屋開け。きっと赤沼オーナーも上がってくるだろうな、と思っていたら小屋に戻ったところでお会いできた。後ほど一杯やりましょう、とお約束をして荷解きをし、先ずはつるちゃんとビールで乾杯!くぅ~…、美味いねぇ~!二人とも何を喋るわけでもなく、ただヘラヘラしながらビールを飲んでた(笑)。 夕食前にフロントで赤沼さんに呼び止められた。 「赤ワインと白ワインと、どっちが飲みたい?」 え?いや、もうすぐ夕食だし、まだ早いですよ。 「いいから、いいから。もう飲もうよ」 え~と、じゃあ赤を頂こうかな? 「え?赤なの?赤かぁ…」 あ、いや、それじゃ白を頂きます。白でお願いします。 「そう?そうだよね、美味しい白ワインがあるんだよね~」 って赤沼さん、自分が白飲みたかったんじゃん(笑)。 夕焼け撮影を終え戻ってきたつるちゃんも交え、食堂前にずらっと並んでいるお客さんの横でワインを飲むわけだけど、いや有り難いんですけど、でもこれちょっと居心地悪いですよ(笑)。 さて夕食後、燕山荘名物でもある赤沼さんによるアルプホルンの演奏とお話が始まった。いつも通りの楽しいお話だったけど、今回は以前には聞かなかったお話もされた。「さて今回は常念岳まで縦走する方もいらっしゃると思いますが、今年は例年になく雪解けが早いので気を付けて下さいね」 「雪が少ないから登るのが易しいという事にはなりません。特に縦走路では大天荘までの夏道は雪崩の危険が高いので、絶対に通らない事。大天井岳山頂まで直登して、大天荘まで下りてください。以前は燕山荘と同時に大天荘も小屋開けしていたのですが、滑落事故があまりに多いので、現在は6月下旬の小屋開けにしたのです。雪が少ない中で滑落したら、むき出した岩に激突して酷いことになりますから、くれぐれも滑落しないように」 びびりますよね…と、つるちゃんがポツリ。うん、気を付けようね。と言ったけれど、最終日につるちゃんはプチ滑落をすることになる。 夕食後に食堂で赤沼さんと更に飲む。つるちゃんが柿ピーを持ってきて、ワインは2本目を開ける。「あ~、この柿ピーがね、良くないんだよね~。つい飲み過ぎちゃう」とグイグイ飲む赤沼さん。僕の記憶はこの辺りまでしかナイ(笑)。 【4月26日(日)・前半】 2日目の朝、今日も素晴らしい天気。5時のご来光を拝んで朝食だ。今日は今回のハイライト、常念小屋まで槍穂を眺めながらの稜線歩きだ。ご飯をお代わりし、食堂を出たところで赤沼さんにコーヒーを誘われた。「この間、オーロラを見に行ったんだけど、話したっけ?」と赤沼さん。へえ、そうなんですか?どうでした?「ちょっと待ってて」と写真プリントを取ってくる赤沼さん。 そこから長々とオーロラの説明が始まり…あれ?えっと、出発の時間が…困ったな。…まぁいっか(笑)。結局予定より1時間遅れての出発となったけれど、それでも本当にお世話になりました。赤沼さん、今度はまた福岡に来て下さいね。 出発間際に大天荘の榊支配人にもご挨拶。ところで縦走路の状況はどうですか? 「途中の蛙岩は真ん中の隙間をくぐり抜けて下さい。足元が凍っているかもしれないので、その時はそこだけでもアイゼンを付けて。そこだけ、って手間ですよね。でも冬山では、その一手間を惜しまない事が大事なんです」 雪焼けした精悍な顔の榊さんから、重い言葉を頂きました。ありがとうござました。 さて縦走路を歩きはじめると、すぐに顔がにやけてしまった。笑みが自然とこぼれてきて仕方がない。 山があって、雪があって、雲ひとつない晴天で、風もなくて、体力も気力も充実して、足を踏み出しただけ標高が上り、前に進むほどに景色(しかも絶景だ)が移り変わる。山の神様、ありがとう。僕らは今、とてつもなく幸せです。 問題の蛙岩は問題なく潜り抜けた。 大下りも無事に抜けた。 さあ問題は本日の核心部、大天井岳への直登だ。 雪はまったく着いていないので、ノーアイゼンで行こう。目視でもルートは明瞭だ。オーケー、クライムオン!って登ったけど、これがキツイのなんの。取りつきとなる喜作レリーフから山上部まで距離にして360m、標高差が203mある、つまり平均勾配が56.4%ってことだ。 ちなみに福岡県人なじみの宝満山ならば、標高584m付近(吉田屋敷跡あたり)から百段ガンギを登りきった中宮跡までが距離にして360mだけど、標高差は141mだから平均勾配が39.2%ということになる。つまり、百段ガンギの1.4倍はキツイってことです(笑)。 しかし登り切った大天井岳からの眺望はまさに絶景。槍が近い!そして槍まで続く喜作新道、東尾根の稜線が美しい。次回はここを歩いて槍へ行きたいものだ。さて山頂着が11時20分くらいだったので、大天荘で昼食としよう。お弁当は燕山荘で作ってもらったものだ。北アルプスの山々に囲まれ、無風快晴・気温は12度、ポカポカと暖かいベンチで食べるお昼ごはんは、これまでの生涯で最も美味しい、最高のお弁当だった。 さあ、常念小屋まではあと少し。順調すぎるくらい順調なだけに、気を引き締めて行こう…と言っているそばから雪渓のトラバースでスリップした。気温が上がって雪が腐ってて、ステップが崩れたのだった。滑落こそしなかったけど、油断大敵!僕のスリップを見たつるちゃんも、ヤバイと思ったらしい。 ということで本日は7時間30分を歩いて常念小屋に辿り着いた。 【4月26日(日)・後半】 常念小屋でも実に快適だった。 まず案内された部屋は6畳間ほどで貸切。寝袋も真新しくフカフカだ。荷解きを済ませてフロントでビールを買おうとしたら、「お客さんが良かったら、賞味期限切れのビールがあるんですけど」と言う。あ、嬉しいなぁ、全然平気ですからソレ売って下さい。「いえ、賞味期限切れてるからタダでいいです。そこにあるの好きなだけ持ってって下さい」…って、え~っ!!!まじですか? 賞味期限って、5月1日じゃん。うわ、こりゃツイてるわ~、とロング缶4本に350缶2本も持って行く我ら。あさましい(笑)。「ベランダ使っていいですよ~」との事なので出たところがまた絶景!ここは日本か?いやいやツェルマットだろ?てなぐらい気持ちいい。つるちゃんと今日の無事を祝いつつ乾杯し、またしても互いに大した話もせずに、ウフフ、えっへへ、と気持ち悪くニヤケながらタダ酒を飲む。 しばらくするとベランダに初老の男性が写真を撮りに来られた。お話しすると、初日の穂高駅発バスから一緒だったらしい。「夕食後に赤沼さんとワイン飲んでいた人だね」と、覚えて頂いてた。聞けば100名山はおろか、300名山を登るベテランクライマー、新潟県山岳協会の理事長も務められた方で遠藤さんと仰った。 遠藤さんとすっかり意気投合し、またもや勧められるままにウイスキーをご馳走になってしまう。ベテランさんの中には山歴を自慢し、説教臭くて煩わしく思う方もいらっしゃるが、遠藤さんは実に気さくでお話が面白く、僕らはすっかり惹き込まれてしまった。そんな訳で、この日もどうやって寝たのか記憶がナイ。 【4月27日(月)・前半】 今朝は常念岳でご来光を拝もうと、つるちゃんと計画していた。午前3時40分、アラームの音で目覚めた。一瞬、自分がどこにいるのか分からなかった。飲み過ぎた朝には良くあることだ(笑)。 ともあれ、まだ静かな小屋を出て星明りの中、常念へ向かった。 「一燈を提げて暗夜を行く。暗夜を憂うることなかれ、ただ一燈を頼め」 夜道をヘッ電ひとつで歩くと、そんな言志四録の一節が頭に浮かぶ。言葉で知っていることを、山はいつも体に教えてくれるなぁ。 そんな未明の山道を、ライトに照らされるマーキングを頼りに無言で歩く。山頂まで一時間、400mの標高差だ。これが今山行の最後の登りなんだ、もう終わっちゃうのか…一歩一歩を踏みしめながら登る。きっとつるちゃんも同じこと考えているんだろう。そんな気がする。 今回、つるちゃんと一緒で良かったな。 本来は単独行が好きな僕だけど、今回はつるちゃんと一緒で本当に楽しかった。 ルーファイでも協力し合えたし、歩調も合ってたし、互いの技量も分かっていて不安もなく、バカ話ばかりしながら(大抵はヤス村住民の話だ)、付かず離れずの大人な距離感が絶妙だった。あはは、こりゃヤスさんやクルさんに嫉妬されるかもな(笑)。 そんな事を思いつつ歩いていると、ふいにつるちゃんが声を上げた。 「あ!出た!」 澄み切った地平の果てから、一筋の光条が僕らを射した。 みるみる膨れ上がる光に、僕らはただ無言だった。 この世は美しい。心からそう思えた。 何か喋ろうと思ったけど、喉の奥に熱いものが込みあげていて、声を出すとつるちゃんにバレそうだから飲み込んだ(笑)。 【4月27日(月)・後半】 山頂から下り、朝食を済ませ、出立。小屋番さんに登山道の状況を尋ねた。 「今年は雪解けが早いから、お客さんだったらアイゼン要らないと思いますよ」 お客さんだったら…とその判断基準が分からないけど、まあこれまでの雪道もそうだったから踵キックステップで行けそうだな。…そして、つる悲劇が起きるのだった。 槍穂に最後の別れを告げ、常念乗越から一ノ沢に入る。雪は腐ってるし、これは小屋番さんの言った通りだ。僕らはノーアイゼンでザックザックと駆け下りて行った。しばらくすると傾斜が強まった。渓の日陰で雪も固い、というかバーン状だ。踵を蹴りこんでも刺さりづらい。ここは慎重に下りよう。 そう思っていた矢先に、後続のつるちゃんが「あっ!」と言った。振り向くとスリップしたつるちゃんが滑ってくる。ピッケルを雪面に突き刺すつるちゃん。何とか僕の脇で止まった。何やってんだか、と笑いながらカメラを構えた途端、「あ、あ、あぁ~…!」とつるちゃんは更に滑り落ちて行った。 いやいや、あれは怖かったろう(笑)。僕も一瞬、ヒヤッとしたよ。まぁU字谷だし、距離はあるけど下部は傾斜が緩むから、どんなに落ちても大怪我にはならなかったとは思うけど。つるちゃん、すっごい汗をかいていました。ゴメン、写真たくさん撮っちゃった(笑)。 そんな、ちょっとしたアトラクション(あ、アクシデントか。笑)があったけれど、無事に下山。常念小屋で予約したタクシーに乗り込み、柏矢町駅そばの「ビレッジ安曇野」で温泉に入り汗を流した。余裕をもってJRを乗り継ぎセントレア空港まで戻ることが出来た。 【おわりに】 もう、これ以上はないと思うくらい、天候も体調も最高の三日間だった。 つるちゃんも言っていたけれど、これからの山行がすべて雨に降られるんじゃないかってくらい恵まれたと思う。 つるちゃん、本当にありがとう。この三日間が最高だったのは君のお蔭だよ。大天荘で淹れてくれたコーヒーの味、忘れない。 ヤス村のお二人さん、LINEでの励まし、ありがとう。今度は南アに一緒に行きますか。でも運転は勘弁してね、ヤスさん(笑)。 山の神様、ありがとうございます。お約束通り、髭を落とし、今後の行いを改めます。 それにしても、やっぱり山はいいなあ。 頭がからっぽになって、心がいっぱいになる。 (こちらが本家です。笑) 【おまけ】 福岡空港でつるちゃんと再会を約し別れた。その数時間後、つるちゃんから電話が入る。一体ナニゴト?と思えば、奥さんがお礼を言いたいのだとか。 電話を代わった奥様の第一声、「あ、ヒロ君?今回はありがとね~!」 …って、僕、会ったことないんですけど、オクサン?…(笑)

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