残雪の燕岳。ラストにトホホ・・・

2014.05.24(土) 日帰り

チェックポイント

DAY 1
合計時間
28 時間 56
休憩時間
15 時間 19
距離
22.3 km
のぼり / くだり
1978 / 1921 m
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活動詳細

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3月に福岡で、燕山荘の赤沼さんと花見をした時に「雪の燕岳もいいよ~!」と伺ってたところ、5月に三連休が取れそうではありませんか。いずれ冬山を楽しめるように雪上訓練をしたいなぁとも思っていたので、燕山荘の「春山登山教室」に申し込んじゃいました。 福岡から名古屋まで空路、そこから電車で松本を目指します。福岡から北アルプスを目指す場合、登山口に取り付くまでが遠く、5時間は優にかかります。今回の飛行機利用では、ある懸念がありました。ピッケルとアイゼンは機内持ち込みが出来るのだろうか?と。実は前回、ナイフ付きのレザーマンをザックに入れたままで、セキュリティに引っ掛かったことがありました。Jetstar と福岡空港のHPをチェックしても、はっきりと該当するような記述がありません。よって早めに空港へ行き、対応できるようにしておこうと決めました。結果的には何の問題もなく搭乗口検査をパス!しかし、これが後にトホホな悲劇を生み出しました(笑)。 松本市内で一泊し、翌土曜日のJR大糸線始発で穂高駅まで行き、そこからバスで登山口へ。集合場所の有明荘には既に大勢の人が集まっています。今回の登山教室は総勢18名とのこと。引率ガイド役の燕山荘スタッフ・榊さん、河地さんからオリエンテーションを受けて、7:50に出発!登山口まで車道を15分ほど歩きますが…ん?やけにペースがゆっくりだなぁ。というか、すご~くスローペースなのです。後に「このペースが大切なんだよ」と赤沼さんに教えて貰いました。汗をかかず、息が上がらず、休憩せず、歩き続ける、「いわゆるボッカ歩きだよね。これが長く遠くまで歩ける一番いいスタイルなんだよ」とのこと。 実際には18名の長い列なので、どこかが詰まって立ち止まってしまう尺取虫状態になること、しばしば。休憩もしっかり取ったので、合戦小屋に到着したのが12:00でした。富士見ベンチ辺りから雪が出ていてキックステップで、合戦小屋からはアイゼンを履いての登りです。尾根に出るまでの開けた場所で、雪上訓練をしました。アイゼンなしの場合の歩き方、アイゼンを付けての歩き方を教わります。それぞれに何度も繰り返し斜面を登ったり、下ったり、斜めったり、トラバったり。とにかく、転ばない歩き方が一番大切なのですね。 次にピッケルワークについて。様々な使い方を教わって、最後は滑落停止訓練。これは何度も繰り返しているうちに皆さん余裕が出てきて、「もっと長く滑ってスピードつけようよ~」なんて楽しんでました(笑)。訓練はザック無しでやりましたが、ザックを担いだ状態でもやっときたいなぁ。でも本当に滑落したら、これはとても止められるものではないな…というのが実感です。いずれにせよ、実際にやってみないと分からないこと、やってみて初めて気づくことがたくさんありました。まずは転ばない歩き方を身につける、これに尽きますね。普段(無雪期)の歩き方でも意識しておこうと思いました。 たっぷりやった雪上訓練を終えて、登り再開です。稜線である合戦沢の頭に出るまで、夏山登山道は雪で埋もれているので直登できます。雪山は夏とルートが違うところが魅力の一つですね。その分、ルートファインディングの能力が要求もされます。燕岳のように雪上に赤布をつけた竹竿をしっかりと立ててくれている所ばかりではないのです。来シーズンまでに読図力を高めておきたいな。 15:30過ぎに燕山荘へ到着、ザックをデポして燕岳を往復しました。やや霞みがかってはいましたが、やはり素晴らしい穂高連峰の山なみ…ため息しか出ません。残雪の山って、夏であれば影になる谷の部分が雪で白くなるため、その表情がよりはっきりするというか、とにかくカッコイイんですよね。ああ、この山の姿を見るためにここまで登ってきたんだよなぁ。もういつまで眺めていても飽きることがありませんでした。夕刻から曇ってきたため夕焼けは叶いませんでしたが、十分満足できる初日でした。 燕山荘の夕食はとっても美味しいです。そして同席した人との会話も楽しい。僕が福岡から来たというと一様に驚かれます(笑)。この日は赤沼さんが予定を変更して山荘まで登って来られていました。食事が終わると赤沼さんの楽しいお話がありました。この日は写真を映し出しながら、燕岳の四季についてなどを聴きました。なかでも印象的な話の一つは、岩のそばにある小さな樹木を写した画像のときの話です。 「この岩の横にへばりついている小さな木があるでしょう?この木は40年前から大きさが変わっていないんです。大きくなっていない。成長するための栄養や環境に乏しい所に芽を出してしまったんですね。自然というのは平等じゃないんです。どこに種が運ばれてきたのか、どこで芽を出したのか、その環境には差がある。不平等なんですね。けれども、その芽を出したところで彼らは一所懸命に生きて行くしかない。僕も山小屋の息子に生まれたから、山小屋を一所懸命にやっていくのです」 僕はこのとき、今は亡き祖父が耳納連山を眺めながら幼い僕に語ってくれた話を思い出しました。 「あん山に植わっとる木は俺が小さか時からあすこに在るもんな。耳納の山ば駆け抜ける獣のごたる生き方もあろうばってん、俺はあの山で動くこつは無くてん、深く根を張って、風雪に耐え、静かにずうっと立っておる、あん木のごたる生き方が好いとる」当時、家業を継ぐことに抵抗を感じていた僕に、諭すわけでもなく語ってくれた祖父の言葉でした。今の年齢になって「生き方」や「在り方」を改めて山や自然から学ばせてもらっていると思います。 楽しいお話が終わった後、赤沼さんとお酒を飲みつつ語らいました。つい先日、祝日として「山の日」の制定が決定しましたが、その件に赤沼さんが関わっていた(かもしれない)という面白い話も。「山の日」制定について関係団体や国会議員が集まっている場で意見を求められた赤沼さん。「山の日」制定は、もともと上高地で行われていた「ウェストン祭」から盛り上がったため、6月に設定されようとしていたそうです。そこで赤沼さんは「6月はまだ冬山だ。誤解を生んで安易な入山が増える恐れがあるから、6月はふさわしくない」と意見しました。議員から「それならいつが適当と思われるか?」と尋ねられ、「8月のお盆前後が良いのでは」とお話したそうです。「あれで『山の日』が8月11日になったのかも知れんな~(笑)」と酔った顔で楽しげに語る赤沼さんでした(笑)。 翌朝4時過ぎに起きて御来光を拝もうと思いましたが、あいにくの曇り空でした。朝食も白いご飯がとにかく美味しくて、おかわりしました。山荘スタッフの皆さんに気持ちよく見送られ、下山。アイゼンワークを意識しながらの雪山下りです。やっぱり下りの方が難しい。7:30に燕山荘を出発して12:00に登山口へ。ガイドして頂いたスタッフの皆さんにご挨拶。特に榊さんには「今シーズン中には縦走で大天荘に泊まりますから!」なんて約束しちゃいました(笑)。中房温泉の立ち寄り湯で汗を流してバスに乗り込んで一路、中部国際空港を目指します。 天候にも恵まれ、満足感に浸り、最高の山行だった…のに、最後の最後でトホホなことをやらかしました…(-_-;)。 前回は帰路に新幹線を利用したのですが、今回は帰りも飛行機を使おうとチケットを購入していたのです。でも空港に着くのが出発20分前。ギリギリなのでちょっと心配はしていました。とにかく急いで搭乗口までと走れるところは走って、保安検査口まで来ました。 そこで引っ掛かったんです…アイゼンとピッケルが…。例のX線検査です。 え?でも往路はコレ通りましたよ!と抗議するも、「他の空港のことは知りません。ココでは通せません」と。 機内持ち込みが出来ないなら、預ければいいでしょ?と聞くと、「搭乗30分前を過ぎると預けられない」とのこと。 そ、そんな!じゃあどうすればいいんですか?「これらを廃棄するか、搭乗を取りやめるしかないです」廃棄って捨てるってこと?預ってもくれないんですか?…ガーン…。(福岡行きの●●便へご搭乗のお客様は急いで下さ~い!)とアナウンスが聞こえてくる。え?え?捨てて乗るか?いやいや、降りるか?え~、どうしよう?ちょっとパニくってしまう僕。頭の中で金の計算をして(笑)、「乗ります!これは廃棄します」と宣言。それから搭乗口まで猛ダッシュして機内へ駆け込みましたとさ。はぁ…最初から新幹線で帰る予定にしときゃ良かった…。と考えても「後の祭り」ですね。 まあ、それでも一応言っておきますよ。 やっぱり山はいいな~。頭がからっぽになって、心がいっぱいになる!…今回は財布も空っぽになったけど…

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