しまなみウォーカー 涙の撤退編

2016.01.09(土) 日帰り

チェックポイント

DAY 1
合計時間
11 時間 4
休憩時間
1 時間 12
距離
50.1 km
のぼり / くだり
1371 / 1367 m
11 4

活動詳細

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【プロローグ】 しまなみ海道を自転車で渡るのは、サイクリストなら誰しも夢見ることと思う。 だが私はサイクリストではない。 正確にはサイクリストをやめて10年以上になる。 もはや自転車でしまなみを横断することに、何のモチベーションも湧いてこない。 それでも旧友たちに「しまなみ走ってきたよ!すごい景色良かった!」などと聞かされると、羨ましい気分にもなった。 そのたびに「おれもレンタサイクルでも借りてしまなみ走ってみようかなぁ」と漠然と思ったものだった。 だが実際にはそれは実現することなく、山にのめり込むうちにその思いも記憶の奥に追いやられて行った。 そして月日は流れ。 しまなみ開通から15年が経った冬のある日・・・。 男は何の前触れも脈絡も無く、ふと思ってしまった。 「しまなみ海道って歩いて渡れるんじゃないか?」 思いついてしまった(まったくバカなことを思いついてしまったものだ)、と同時にこの行為にふつふつとモチベーションが湧いてくるのを感じた。 早速ネットで情報を収集すると「自転車・徒歩での横断コースは約70km」とあった。 どうせやるなら1日で横断するのがおもしろい。 思いつくとこの男は良い意味でも悪い意味でも前のめりだ。 ウォーキングシューズを購入し、ネットで徒歩での横断レポを漁り、手製のマップを作成し、着々と準備を進めていった。 そして年明け早々の三連休の初日。 男は早朝の尾道駅に立っていた。 【尾道~因島】 早朝4時に尾道駅を出発。 今治駅到着タイムリミットは、尾道行最終バスが出る19:30だ。 まずは海岸沿いをゆっくり歩きだす。 さすが港町の観光地だけあって、街灯も整備されていて夜でも安心感がある。 まずは尾道大橋へのアプローチだが、ネットでも情報が乏しくハッキリとわからない。 ただ、どのしまなみ関連の公式ページを見ても「自転車・徒歩での通行は推奨しない」とあった。 入口は道路標識のおかげですぐにわかったが、明らかに自動車専用道へのアプローチのような作り・・・。 だがお決まりの○○cc以下のバイクの通行を禁ずる的な標識は見当たらない。 不安を抱えたまま、自動車道特有の回り込んだ道を登っていくと、果たして尾道大橋が見えてきた。 まずは最初の橋に辿り着けてホッと一息。 橋の取りつきまで来て、車道の脇に歩行者用の道があるのに気付いた。 これを登って来てたら1、2kmはショートカット出来たのに・・・。 この後何度も悩まされる橋への取りつき方だが、基本的にオフィシャルサイトでは、自転車と歩行者は同じ道を通るように表示されている。 だが実際にはほとんどの橋に、橋の取りつきに直接アクセスする歩行者専用道があった。 階段だったり、農道のようなコンクリート道だったり、登山道のような道だったりするのだが、そのほとんどがアンオフィシャルな道なのだ。 思うに、徒歩で橋を利用する人は少ないため、歩行者専用道の整備には金も手間もかけていないのだろう。 整備しない道は安全を保証出来ないから、アンオフィシャルにするしかない。 だからもちろん標識も無いので入口を見逃す。 そして橋までたどり着いて初めてショートカット道の存在を知る、というあんばい。 ショートカット道を利用することで、多分しまなみ全線で5kmは距離を短縮出来ると思う。 いかにショートカット道を見つけるかが、しまなみウォーカーの肝だ。 さて尾道大橋だが、歩いてみて「自転車・歩行者の通行を推奨しない」意味がわかった。 歩道はあるのだが、歩道のど真ん中に橋のケーブルがぶっ刺さっているのだ。 これでは自転車は通れないだろう。 だが歩くぶんにはケーブルを避けるだけだから問題なかった。 そして最初の島 向島に上陸! 住宅地の中など、出来る限りショートカットを意識して歩いた。 瀬戸内海の朝焼けが美しかった。 因島大橋でも、最短の取りつきルートを見落として、大幅なロスをしてしまう。 この時点で用意していた予備タイム2時間のうち1時間を使い果たしていた。 因島大橋は上下2層構造になっており、歩行者は下層を歩く。 通勤と思しき自転車や原付をチラホラ見かけるようになってきた。 すっかり夜も明けて、因島内陸部をのんびりと歩く。 途中寄ったコンビニで朝食を取りながら休んでいると、白いわんこが遠巻きにチラチラこっちを見てくる。 あんまり目線でアピールしてくるもんだから、一旦敷地を出て、ゆで卵をお裾分けした。 最近では市街地で野良犬を見かけることはほとんどなくなったが、しまなみはどの島でもよく見かけた。 多分10匹は遭遇したんじゃないかなぁ。 どの子も必要以上に人間に近づいて来ず、野良犬としての生き方を熟知している様子だった。 だが明るいうちに遭遇するぶんにはいいのだが、暗いうちは怖かった。 向島でショートカットをしようと峠に向かっていたら、けたたましく吠えて威嚇された。 暗がりで姿は見えず、しかも2匹以上いる・・・。 結局ショートカットは断念するしかなかった(笑)。 それでも、人と犬が共存している大らかな島の生活は素晴らしいし、こうあるべきだと思った。 さて内陸部を抜けて島の反対側に出ると、ほどなく生口橋が見えてきた。 美しい斜張橋で、歩行者は車道の脇の専用道を歩く。 ここは取りつきへ上手くショートカット出来たと思ったが、橋に着いてみるとさらに近い道があった。 うーん・・・ほんとショートカットは難しい。 【生口島~大三島】 生口島ではしまなみ公式推奨ルートではなく、時間短縮のため島の南側のルートを取ることにした。 このルートはとにかく長かった・・・。 観光開発に見放された道沿いには、コンビニも商店も無く、ひたすら海沿いの道を歩いた。 この頃から休憩後の再始動が辛くなってきた。 時間を取り戻すため、ペースアップしたのが響いてきたか。 長い長い生口島を抜けて、多々羅大橋を渡る。 しまなみ一の美しさと称えられる、鳥が翼を広げたような見事な斜張橋は、何度見ても感動する。 この橋が斜張橋の可能性を切り拓き、後の巨大斜張橋完成に繋がったのだとか。 大三島に渡ってすぐの、道の駅のようなところで昼食にした。 エビフライカレー大盛りとタコ天を注文。 エビもタコもぷりっぷりで美味しかったー。 昼食を取りながらマップとにらめっこしてると、もう予備タイムを使い果たしていることが判明。 さらにペースアップしたいところだが、もう足が思うように前に出てくれない。 タイムリミットを気にせずこのままゆっくりゴールを目指すか、とにかく行けるだけ行って、最悪どこかでリタイヤするか、決断を迫られる。 歩きながら悩んで、後者を選択することにした。 とにかく可能性があるうちは、ペースアップして行けるところまで行こう。 【大三島~伯方島 そして撤退】 大三島橋に辿り着く頃には、右足の感覚が無くなっていた。 実は向島のあたりですでに甲に痛みがあり、だましだまし歩いていた。 それは我慢できるのだが、ペースアップの影響で太ももからふくらはぎから、しびれるような痛みを感じるようになっていた。 もはやストックを頼りにトボトボと歩く有様。 10歳のとき以来、30年ぶりに渡る大三島橋の感慨に浸る余裕も無い。 もうタイムリミットには絶対間合わないが、何とか行けるところまで行こうと自分を鼓舞する。 ドン亀のように遅い足取りながらも、どうにか伯方・大島大橋が見えるところまで来た。 が、その瞬間伯方島のバスストップが目に入る。 この先の全島中最も長い大島の行程。そして同じく最も長い橋 来島三連橋が頭を駆け巡る。 そして心が折れた。 49キロ地点。 全行程のおよそ三分の一を残しての撤退。 バスストップでバスを待つ負け犬は、リベンジを心に誓って島を後にした。 次回、しまなみウォーカー 感動の完全踏破編に続く?

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