活動データ
タイム
21:15
距離
25.3km
のぼり
1779m
くだり
2415m
チェックポイント
活動詳細
すべて見る屋久島。子供の頃(5歳頃だっただろうか)に行って以来、およそ四半世紀振りのその島を訪れることは子供の頃からの夢であり憧れでもあった。もっとも記憶にあるのは屋久島行きのフェリーの船内から見た海原と、車に飛び付いてくるヤクザルの群れと車内から見た大きな虹(記憶にある限りでは初めて)だけで、実質初めてと言っても差し支えはない。しかし、いや寧ろだからこそ、自然好きの身としてはずっと訪れたくて止まない場所であり続けたのだと思う。 そんな特別な場所を、遂に訪れる。 四半世紀余の憧れと共に。 1日目 9:50頃に宮之浦港に到着。 予定通り12:50のバスに乗り、合庁前を経由して紀元杉で降りた。 実は11時頃に、9:55発のバスで屋久島自然館まで行って時間を潰していたら良かったのではと思ったが後の祭り。代わりに屋久島環境文化村センターで時間を潰したが…。 紀元杉はバスを降りて100m程度の場所に在った。 鬱蒼とした木々に覆われ道路上からではあまりはっきりとは見えなかったが、一周できる木道から裏側に回ると、その巨大な存在をはっきりと目に捉えることができた。今まで見た杉の中で一番の大きさに違いない。これからの道中が楽しみになってきた。 淀川登山口への道中、川上杉という杉に出会った。最初右手の看板に川上杉とあったが細めの倒木しかなかったので、それが川上杉かと少し落胆し先へ進もうと振り向いた。落胆の眼差しで反対側の森をふと見上げると、そこには圧倒的な存在感を放つ川上杉が在った。紀元杉と違い陽に当たり白銀に輝くそれに、先程よりも大きく感嘆の声を上げてしまった。 淀川登山口から淀川小屋までは然程の距離ではなかったが、最近大して山登りをしていなかったこともあり、かなりの疲労感があった。 そして初めての小屋泊。期待より不安を感じながら、夕ご飯を食べ、18:30という普段ならありえないほど早い時間に就寝した。 2日目 何度か目が醒めながらもその度に寝直し、朝の4:00頃に起床した。 当初の予定では朝食後5:00頃には出るつもりだったが、森の深い暗闇に恐れをなし6:00の日の出後に行動することにした。日の出前から行動できれば予定に余裕ができるのだが…方向音痴の身だと道を間違え彷徨う未来しか想像できないので致し方ない。 その代わり夜空は未だ満天の星空日和で、その上大好きな昴(すばる)をはっきりと見ることができたので、かなりの幸運なひとときだった。 花之江河は想像よりは小ぢんまりとした湿原で、却ってそこに惹かれる何かがあるような場所だった。水は底が見えるほどに澄んでいて、地面は芝生を敷いたかのように生えた小さな草が覆っており、山の中に現れたオアシスの様にも感じた。 宮之浦岳への道のりは運動不足の身には厳しく、また恨めしいほどに照る日差しはより一層体力を奪っていく。歩く、休む、歩く、休む、また歩く。道中のヤクザルやヤクジカと出くわすことが何度かあった。中でも印象的だったのは登山道脇で枝葉を貪りながらガン見してきたヤクジカと、登山道に躍り出てきては一時の間案内するかのように前を歩いていたヤクザルだろうか。ただの偶然だろうが、そうは思っても疲れた心身を癒やすには十分過ぎる出来事だった。 やっとの思いで登頂を果たした宮之浦岳からの眺望は抜群で、笹に覆われた緑の平原はもちろん、特に永田岳を見ると登頂欲求が沸々と湧いてくる次第だった。おまけに人っ子一人居なかったため休憩中の30分ほどの間だけ、頂上を独り占めすることができたのは何より僥倖だったと思う。但し、今日の目的地である高塚小屋への道のりの果てしなさに若干辟易もしたが。 宮之浦岳の登頂後直ぐに出始めた霧は段々と広がり、平石へ着く頃には宮之浦岳が霞始めていた。それでも雨が降るかも知れないという不安が芽生えなかったのは、屋久島だから当然だろうという気持ちがあったからに違いない。 しかし晴れ男の面目躍如か、結局一滴も雨が降ることはなかったおかげで、暑いばかりだった。その上、坊主岩を過ぎた辺りから飲み水が底をついた。2lでは足りなかったらしい。喉が乾き過ぎて新高塚小屋までの1時間は生きた心地がしなかった。 新高塚小屋でふんだんに水を汲み喉を潤した後、1時間ほどで高塚小屋に到着した。縄文杉に今日の内に行くか迷ったが、水場が縄文杉近くにしかないとのことだったので行くことにした。 子供の頃から夢見た縄文杉は、写真のイメージより離れた場所からしか望めず、直ぐ側まで近寄れた他の巨木ほどの圧迫感を体験することはできなかった。しかし遠目にも分かるほど太くずっしりとしたその幹は写真で見てきた縄文杉そのもので、淀川登山口からはるばる歩いてきた対価としては十分すぎるほどだった。水場はその縄文杉の展望台の下を流れており、そのためか他の水場のものより美味しく感じた。 3日目 隣人のいびきの酷さに中々寝付けないまま迎えた朝4:30頃、何だかんだで小屋を出た頃には他の宿泊客は皆出払った後だった。起きてすぐ首の裏がチクチクするなと思い触るとなんと蛭が噛み付いていた。初めて見たけれど多分蛭だろう。後でググったらなんか違う気もしたけれど。血とか出なかったし。何はともあれ5mmはあったんじゃなかろうか。心底気持ち悪かった。二度目の縄文杉は夕暮れ時と違い陽の光を全身に浴びており、また晴天だったために幻想的とは言えなかった。それでも魅入るには十分の存在感で、10分程してやっと後ろ髪を引かれつつも後にすることができた。 その後も夫婦杉や大王杉などを通りながら下山していたが、大王杉の傍に有った立て看板にいつ倒れてもおかしくないとの旨が書かれており、世の無常さを感じた。今こんなにも堂々と聳え立っているこの巨木が明日はおろか1分後、10分後にでも倒れるかも分からないだなんて、想像し難いのだ。縄文杉にもいつかその時が来るのだろうか。確かなものなど何もないという当たり前の理を、この場所にいると強く感じてしまうのは、何故なのだろう。 続いて訪れたウイルソン株は、ちょうど株の上へと光が差しており、さながら舞台のようで、そこに生える蘖はまるでスポットライトに照らされた舞台役者のようだった。この蘖こそがこれからの主役とも言える訳で、栄枯盛衰の象徴的な場所であるに違いない。 その後トロッコ道だろうか、レールの上を歩いていく。本来ならありえない行為だが、この島ではそれが可能らしい。デジモンでトロッコ道だったかを進むシーンを見て以来、線路の上を進むのはちょっとした夢だったので(線路の向こうって何だか新しい世界へと続いていそうな気にならないだろうか)地味に満足できた。途中ぴょんとレールから跳ねる物体がいたので蛙かな?と思い目を遣ると、なんとネズミが!ヒメネズミって言うのだろうか。大きな目に小さな手足、体と同じくらいの長さのしっぽのバランスがなんとも愛らしい。まあ家で出たらそれどころじゃないのだろうけれどね。 トロッコ道の途中から楠川分かれに入ると言うのは頭の中にあったが、余りにもトロッコ道を歩くのが楽しすぎて分岐点を普通に見逃していた。と言うか立て看板があったが見た上でスルーしていた。ちょっと萎えた。 楠川分かれから辻峠までの道のりは、この日ほぼ唯一と言っていい登りの道で、既に初日から歩き通しで疲労困憊の身にはかなり堪えるものだった。途中何度かもう駄目かもと思ったが、中腹の木道の階段に足を掛けようとした瞬間に掌より遥かに大きな蛙が飛び跳ねたので思わず声を上げてしまった。しかしそれが良かったのか同時に少し冷静になり、少し行った先でザックを下ろし行動食の抹茶羊羹を頬張りながら一息吐いたらなんか行けそうな気になった。やはりこういう時は休憩するに限るということだろう。疲れて体が思うように動かなくなると次第に焦り始め休憩しようという余裕がなくなるものだが、それでもやはり休憩した方が良いということを改めて痛感した。蛙は最近出たiPhoneより大きかったんじゃないだろうか。因みにそれから直ぐに後ろから来た学生ぐらいの年頃の登山客と話しながら登っていたら10分もしない内に辻峠に着いた。気持ちの持ちようって本当に大事だなと、しみじみ感じた。 時間があれば辻峠から30分程度で行ける太鼓岩にも足を運びたかったが、楠川分かれでの道間違いとそこからの極度の疲労でかなりの時間を費やしたので今回は断念することにした。15時ぐらいのバスの便があれば行っていたのだが、仕方あるまい。 その代わり白谷雲水峡では有名なもののけの森(苔むす森)を少しゆっくり目に観たり、白谷川の流れを眺めたりと、多少ゆっくりしながらバス停まで歩くことができた。 そして丸2日が経とうかとする16:00頃にようやく登山口へ到着。旅路はもう少し続くが登山はこれでおしまい。張り詰めた緊張感から開放されると共に、少し名残惜しさも感じた。 予定通り14:15のバスに乗れたことで宮之浦港での空き時間が2時間ほどできたため、食事と土産探しをする時間を作ることができた。しかしその前に、益救神社へ参ることにした。延喜式の神名帳にも載っている由緒ある神社で載っている社の中では最南端にあるものらしい。 元々神社巡りは好きな方だし、何より無事下山できたことのお礼をせねばなるまいという訳だ。 由緒あるとは言え空襲で古くから在った社殿は倒壊したらしく、今あるものは戦後10年ほどしてからのものらしい。境内にある社務所等、他の建物も未だ新しさの残る感じで、文化財としての期待は抱かない方が良いようだった。しかし益救神社の歴史を紐解くと衰退と再生の繰り返しのようで、そういったところも屋久島らしいと言えばらしいのかも知れない。 その後はテレビにも取り上げられたという飛魚ラーメンを食し(美味しかった)、慌ただしく土産選びへ。時間が限られていたので、却ってあれこれ悩まずには済んだ。まあ悩む時間こそが土産選びの醍醐味でもあるのだが…。 そんなこんなで時間はあっという間に経ち、17:00に屋久島を離れた。次訪れるのはいつで、誰とだろう。嫁を連れてゆっくり巡るのも良い。そしてきっとその時は、懐かしい出で立ちに永久を感じ、代わり移ろった様には世の無常さを感じるのだろう。そんな楽しみを持てるのが屋久島なのだと思う。 古くから生き長らえる古木がある一方で新たに芽吹く若き蘖もある。輪廻の巡るこの島を、愛さずには居られない。
活動の装備
- バーグハウス(berghaus)Pravitale Hybrid Jacket
- ソト(SOTO)フィールドホッパー
- トランギア(trangia)アルコールバーナー
- ライペン(RIPEN)スーパーライトツェルト2(2~3人用)
- ファイントラック(finetrack)スキンメッシュT
- その他(Other)BAILESSショートスパッツ-YELLOW
- モンベル(mont-bell)ストームクルーザー パンツ Men's
- モンベル(mont-bell)ストームクルーザー ジャケット Men's
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