活動データ
タイム
09:03
距離
22.2km
のぼり
331m
くだり
1917m
活動詳細
すべて見る山で飲むビールの味は格別だ。何故こんなにも美味しく感じるのか不思議で仕方ない。だって、僕は普段はあまりお酒を飲まないし、それほど美味しく感じることはないから。だから、例え禁酒法が制定されたとしても、なんとも思わないし、例えそれが原因で暴動が起こったとしても、僕は単なる傍観者としてそれを遠くから眺めているだけ。だけど、山で泊まりの時はビールを飲む。何故だか分からないのだけど、山で飲むビールの味は美味しく感じるから。そして今日飲んだビールの味は、今まで飲んだビールの中で一番美味しく、最高に気持ちよかった。 消灯前、小屋前のベンチ。誰もいない貸し切りのそこで、ぼんやりと槍の雄姿を見上げながら、僕はこんな事を考えていた。 人生はどうなるか分からない。僕は本来しんどいことは大っ嫌いだ。よくテレビのニュースとかで、皇居前をジョギングしている人を映し出しているけど、仕事の前後や休日に、わざわざしんどいことをしているなんて理解できないって、そんな気持ちで見ているだけ。だから、登山なんてもっと理解できなかったし、槍登頂なんて論外。滑落のニュースを見聞きするたびに、何故危険で一歩間違えれば死ぬかもしれない、そんな山に登るのか分かりたくもなかった。 山を知る前、オフロードバイクで林道を走ってると、よく登山者と遭遇した。その度に、わざわざ休みの日に、危なくて疲れる行為を何故しなくてはならないのか。馬鹿なんじゃないの?って、冷めた目でその人らを見つめて走ってたし、正直、せっかく気持ちよく走っているのに邪魔だよとも思ってた。 人生はどうなるか分からない。あれだけ忌み嫌っていた登山者に、今僕はなっている。そしてあれだけ理解不能だった槍に、僕はたった今登ったのだから。 山を始める前は、よく林道をオフロードバイクで走ったり、峠道をオンロードバイクで気持ちよく爆音を響かせながら走っていたのに、今は林道を歩いている時にバイクと遭遇すると邪魔だよと思う。山を登っている時に、峠道を走っているバイクの爆音が聞こえてくると、せっかくの雰囲気が台無しだよって怒りさえ覚えてくる・・・。 今僕は、ほぼ休みの度に山に登り、その山に登るためのトレーニングとしてジョギングをしている。あれだけ大っ嫌いだったしんどいことを、進んでやっているなんて・・・。人ってこんなにも変わるのかって、何故だか槍を見つめながら、そんなことを思ってた。人生はどうなるか分からない。 だからこの先もどうなるか分からない。山をずっと続けるのか、辞めているのか。またバイクに戻るのか。それとも新たなる趣味を見つけてそれに興じるのか分からない。でもだからこそ、人生って面白いのかも知れない。そして、こんなことは決して麓にいる時は考えたりはしない。でも、山に登っていると不思議とそんな事を考えてるし、そんな事を考えられる時間が山にはたっぷりとある。だからこそ、山は面白いのかも知れない。 人生ってどうなるか分からない。だから僕はいつも考えてる。「次はどの山に登ろうか・・・」槍を見上げながら、僕はそんな事を考えてた。
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