活動データ
タイム
09:04
距離
20.9km
のぼり
1539m
くだり
1910m
活動詳細
すべて見る秘境、秩父矢岳に再チャレンジ。ついに無事完走となりました!いやはや本当に嬉しい20km、9時間の山行となりました。できることはすべて実施し、想像以上に上手く進むことができました。 同じコースを進まれる方はあまりいないかもしれませんが、自分への思い出備忘録がてら詳細を記載したいと思います。 ■再チャレンジへの経緯 思えば1か月前の2018年9月8日、人気のない荒れた破線ルートに心が折れ、エスケープした烏帽子谷で逆に道迷いからのプチ遭難。霧深い谷底で熊らしき動物が前を横切り、沢沿いを大声で歌いながら下るという大変貴重な経験をすることができました(レポート是非ご参照くださいませ><)。 道迷いの最中「もう当分は破線ルートには来たくない」と心底思ったものですが、そこから3日も経つと、こころにもやもやが。時間が経てば経つほど反省点が明確になり、同時に思いがたぎってきます。 『涼しくなり、かつ日の入りが17時台の10月上旬がラストチャンス』 そう思うようになりました。そして、9月の連休はなんだかんだと予定がはいり2週連続山から遠ざかった分、先週は土曜に足慣らしの秩父丸山ハイキング10km(奥さんにもレポを読ませたら大爆笑w)、日曜は早朝高速バスでいく箱根金時山18kmと2日で約30kmほどのトレーニング。 そして、満を持しての10月13日(土)を迎えました。 ■制約事項は「時間」と定義 まずは仕事だと思って計画を立てます(笑)。 私はTOC理論を信奉しているのですが、簡単にいうと業務の生産性はボトルネック(制約事項)に左右され、その制約事項をどう設定しどう改善するかという内容です。 第一の制約事項は移動可能「時間」と考えました。 東日原から天目山を経由し、そのまま北に破線ルートをたどり秩父矢岳へと向かうルート。山と高原地図ではコースタイム(CT)10時間。東日原バス停からは8時に出発すると、どうしても日の入り(17時11分)には間に合いません。かと言って、時間を意識すると気もせってしまい滑落など無用な事故に合うことも。 そこでカバンの中に3つもライトを忍ばせることにしました。 ・モンベルのヘッドライト ・超小型懐中電灯66g ・超強力懐中電灯167g 頭と右手と左手に明かりを。流石に大丈夫でしょうw。これで時間を制約事項から外すことができました。道中は落ち着いて安全第一を心がけて歩くことができます。 次の制約事項は「体力」になります。 登山には昼食という概念がない、という登山家の記事を思い出しました。一気に補給するのではなく、ちょこちょこエネルギーは補給すべき、と。そこで、お湯とラーメンを持っていくのをやめ、以下を用意しました。 ・山よりだんご ※おいしい! ・くるみ餅 ※うまい! ・干しレーズン ※甘い! いずれもアマゾンで売っています。特に山よりだんごとくるみ餅は炭水化物としてはかなり美味しいです。その分、ご飯物はすこし減らし納豆巻と小さな三色弁当を用意しました。 更に前日からBCAAを摂取し(意味あるのかな?)、当日持っていくサプリメント(ビタミンとか)に『アリナミンAを持っていったら良いんじゃね』とひらめき、サプリケースに追加しました(意味あるのかな?)。 長めのランチ休憩をなくし、その分、短い休憩をちょこちょこと取る作戦です。 そして最後の制約事項は「足」。 当日は、太もも、膝、ふくらはぎに両足合計10枚のテーピングを実施。さらにその上でいつものサポーター(バンテリンを愛用)を膝とふくらはぎの左右4つを身につけます。これで準備万端です。 他に実施した工夫は以下。 ・重量軽減のため、ストックは一本(しかも140gと超軽量) ・木や岩を掴めるよう厚手のグローブを用意 ・替えのズボンを用意し遠慮なく四つん這いに ・熊鈴は2つ用意 ・携帯スピーカーの充電は満タンに ・万が一のためにモバイルバッテリーを3つ そして、当日の朝を迎えました。 ■3度目の一杯水避難小屋までは超順調 今回も時刻表通りに8時前に東日原バス停に着きました。今までで一番いい天気です。 民家を超え、急登を超え、無事に一杯水避難小屋までたどり着きました。短期間で3度目ともなるとコースもだいたい覚えており、ペース配分もかなり適切にできたと思います。前回より12分はやく避難小屋に着きました。 早速、山よりだんごや干しぶどうを補給し、休憩もそこそこに左へ曲がり矢岳への分岐点を目指します。 25分後に大栗山、19分後に七跳山、26分後に坊主山を超えました。そしていよいよ破線ルートに突入です。 ちなみに、ここまでで同じ人に2回抜かされました。青い服でカーキ色の見たことないおしゃれな形のザックを背負っているお兄さんで、一度目は登り始めで、もう一度は天目山を超えたところで。二度目に抜かされるときに「どちらまでですか?」と聞いたところ「酉谷山まわって東日原へ降りるルートです」と回答が。後から調べると20kmくらいの歯ごたえあるコース。あのザックもこだわりの一品と見た(ネットで調べても出てこなかった。ペットボトル入れが右側にだけ着いているもの。どのメーカーだろう)。 坊主山の山頂を少し超え、尾根が低くなったところから登り始めると楽に尾根道に上がることができます。前回は過去のレポートを参考に取り付いたのですが、多分今回の私の軌跡の方がずっと安全に登ることができます。 そして右に曲がり牛首を目指します。ここからが本日の本番です。時間は11時33分。CTより一時間早くスタートすることができました。 日差しは多少陰ってき、気温も涼しくベストコンディションでした。 ■牛首で準備を整える 1か月ぶり2度目となる踏み跡のないまっさらな空間に歩を進めます。 前回の苦い絶望感を再び思い出します。ですが今回は2度目、烏帽子谷までの道筋ははっきりと記憶に残っています。慌てることはありません。足裏に腐葉土の柔らかさを十二分に感じながら、ことさらゆっくりと足を踏み出します。 最初に目指すは30分ほど下ったところにある「牛首」という尾根道の谷間です。岩場の急登を降りるため、ストックをザックに収納し、厚手のグロープを手にはめ、右手左手で木をしっかり掴みながら下っていきます。 牛首という地名、中国や韓国にも多くあるそうで、日本では牛頭天王を祀る神社に由来することが多いそうです。そもそも牛頭天王が何なのかはかなり謎で、スサノオの別名だったりインドの神様だったりとネットには書いてありました。ここの牛首の由来がそのあたりにあるのかはわかりませんが、前回、ガスも出てきていたせいか、その場所には多少の神秘性を感じました(手書きの看板もある意味神秘的ですw)。 前回同様、牛首の小脇にある岩に座り、地図を確認します。これからチャレンジするピークの数をおおよそ数え、脳内でイメトレです。同様に音楽などもすべてセッティングし、熊鈴2個もリュックの左右にしっかりと取り付けます。更には山よりだんごとくるみ餅を食べ、干しぶどうで口直し。最後にアリナミンAを飲み込みます(意味あるかな^^;)。そして前回凍ったまんまで飲めなかったハイドレーションのポカリスエットを確認します。 今回は水のまま持ってきましたので問題なし。季節も秋になり涼しくなったせいか、残量も8割方残っていました。これなら十分です。 ■2つ目のピークでまたもやらかし! 「バリルートに巻道なし」とはかの有名なアザラシさんの言葉ですが、またやらかしてしまいました。 このルート、最初の一つ目のピークが(多分)左に巻けます。登りきってから「ここは巻けたんだった」と気づき少し引き返します。そうなると人間弱いもので「二つ目も右に巻けた気がする」と巻道っぽい踏み跡を進んでいきます。 そうそれ! 前回もよじ登りましたから! いきなり前回の失敗を再現してしまいました。斜面を強引に進んでいくと、もう崖です。しかも岩を垂直に登らないとピークに上がれません。なんとか2mくらい後ろに下がり、強引に木の枝にしがみつき上によじ登っていきます。もうズボンはドロドロ、体全体から腐葉土の匂いがします。 『馬鹿、自分馬鹿』 人の心の弱さを感じました。「尾根道を外さずまっすぐ進む」と決めてきたのに、ついつい巻いてしまいました。そして幻覚。わかっていても駄目ですね。ここで覚悟が決まりました。 『これから絶対に巻かずに、前だけ見て尾根道を進み続ける!』 そしてどんどんピークを超えていきます。 ■登山にも存在した「ゾーン」 私のように破線ルートに不慣れな方は、何度も繰り返す荒れた上りの急登に恐れを抱いてしまうと思います。 ですが、頑張って5mくらい登るとピークの上は意外に平和です。しかも荒れている分だけ「手がかり」が多く、きちんと厚手のグローブを嵌めていれば、ハシゴを登るような感じでスイスイ登れたりします。 怖いのはそのピークからの下りです。ところどころ2本足ではとても下れず、両手両足を使い、更にはお尻も使い慎重に降りていくことになります。また、下りの方が道迷いしやすく、うっかりするとピンクテープが5m以上も左右にずれた場所にあったりと。足元を注視しつつ、下りこそ頻繁にピンクテープの存在を確認する必要があります。 今回、1か月前の記憶がはっきりと残っていたため、ほとんどコースを外れることなく進むことができ、その安心感からか足を踏み出すときの集中力も十分に維持できました。 そして、立橋山と思われるピンクテープが滅多矢鱈と貼られた通行禁止的なランドマークを超え、順調に先に進んでいきます。 『赤岩の頭についたら一休憩しよう。13時過ぎには着くだろう』 そう思いながら右足の置き場所、左足の置き場所、右手はどの木をつかむか、左手はどの岩に添えるか、そしてピンクテープはどこにあるかを確認していきます。 リュックのサイドポケットからは陽気なJ-POPが大音量でながれ、2つの熊鈴が小気味よいリズムを刻みます。チリンチリン。 なんだか妙にテンションがあがり、比例して集中力が高まってきます。右足、左足、右手、左手、、、なんというのでしょうか、スポーツで言うゾーンに入った感覚です。仕事で提案書を作っているときにも似ているかも。TOC理論。 そうして何曲目かわからない曲が熊鈴のリズムに合わせ流れ終わったときには、なんと赤岩の頭どころか前回エスケープした烏帽子谷までも超えて進んでいました。矢岳まで20分くらいでつきそうです。超高速! ■憧れの矢岳には素敵な標識があり 矢岳直前には2つの大きな岩があります。 いずれも左右から巻けますので無理に乗り越える必要はありません。 一つ目の岩を登ったところ『ぎょ!』、少し驚きました。道の真中に3つのリュックが並んで置いてあります。 『一人じゃなかったんだ…』 なんだか少しホッとしました。しかし、周囲を見ても人の気配は全くありません。『リュックをデポして矢岳に登っているのかな。であれば頂上で会えるかも』そう思うも、どうにも解せません。自分だったら、3つのリュックをもう少しちゃんとまとめて置くのではないか、と。それにしては、リュックが雑に置かれています。念のために尾根道の両脇を見てみますが、完全に崖になっており人がいる気配はまったくしません。 やはりデポして矢岳に向かっているのだと思い、二つ目の岩を超えて山頂に向かうことにしました。念のために写真を撮っておきました。 そして13時30分、矢岳山頂へとたどり着きました。 矢岳山頂には、苦労した分だけ素敵な展望が!あるというわけでもなく、その点は皆さん期待しないでください^^; あるのは「ただの満足感」だけです。ですがそれが嬉しい。 そうそう、標識があります。一つはシンプルなもの。もう一つは何やらきれいな「矢岳」標識です。これって自治体が用意されたものではないですよね。誰かがボランティアで勝手に付けたのでしょうが、何とも癒やされます。本レポートのベストショットにしましたので、是非御覧ください。 登山って、苦労した分だけちょっとした物事にも感動できますよね。こういった標識一つにも感動と感謝を感じる事ができ、自分の感情を定期メンテナンスしているように思います。現代人が一日で得る情報量は江戸時代の庶民の一年分に相当するそうです。そんな現代こそ、定期的に山の中に身をおくことで情報量に負けない生活を過ごすことができる気がします。 今回も、頑張って来て良かったです。 そして矢岳を後にします。これからは基本下るだけ。順調に行けば3時間ほどで麓が見えてくるはずです。 ■矢岳「まで」が破線ルートだった 矢岳からその先は、実は結構楽な道でした(本日比)。 ここまでの岩場混じりのピークから、落ち葉と腐葉土が敷き詰められた平坦な道が多くなります。その一方、道は不明瞭になるため、ピンクテープが増えてきます。いや、ピンクどころか、赤、黄、青など信号のようですw。 特に矢岳近辺は尾根の右側の樹々に10本くらいまとめて青テープが巻かれていたりします。林業関係の伐採予定にしては固まりすぎているため、これは道なき道を登ってくるルートファインディングな人たちのための目印になるのかなと思いました。 また、所々の樹々には何かの動物の爪痕が生々しく残っています。実家で飼っていた猫が柱で爪を研いで親から怒られていたのを思い出します。多分かなり大きな猫と思われます。 また地面にはところどころに何か(猪?)が泥で体を洗ったのではと思われる土が露出した場所があります。 少ピークの山頂で休憩をしようと思いつつも、こういった気になるランドマークがあるため、なかなか落ち着いて座ることができず、足を止めることなく1時間以上進んでいくことになりました。 14時30分ごろでしょうか、いきなり右側の展望が開けてきました。適当な岩に座り、赤岩の頭から遅れること2時間、ランチ休憩を取ろうと小さな三色弁当を出して食べることにしました。ただ、これが冷たくなっており、なかなか食が進みません。うーん、難しい。さほどお腹も減っていないので、半分くらいで食べるのをやめ、代わりに山よりだんごを食します。ほんと美味しいんですよね。 ■なんと、明るいうちに帰れそう! しばらく行くと鉄塔が見えてきました。 武州中川駅から逆向きに歩く人がかならず目印にするランドマーク。目の前の樹々がすべて伐採されており、眺めが本日で一番いい感じです。鉄塔の基礎部分に腰をかけ、5分ほど休憩です。念のためハイドレの水の分量を確かめ、少し残ったソルティライチをポカリに混ぜ前回同様のカクテルを飲みながら更に下ることにしました。 鉄塔を左に曲がり、少しザレた道筋を降りていきます。途中、下山ルートと逆向きの矢印で「フクジュソウ」という看板が。どこかの民宿かと思いつつ、そんな山奥にあるはずがない。後日考えるに「福寿草」という花が咲いている場所を指しているのかな、と思うにいたり。結局なんでしょう。 そして無事に民家を発見。なんと16時15分、まだまだ明るい時間に武州中川駅までたどり着いてしまいます。 『よし!軌跡ルートをつなげるために、浦山口駅まで歩いちゃえ』 急遽、一駅ウォーキングすることに決定です。時間にして30分ほどでしょうか、少し余計に歩くことにしました。そして、出発からちょうど9時間、17時丁度に浦山口駅前にある最後の急登となる「急な階段」を上り駅の改札に無事到着となりました。 ■駅で110番通報をすることに 駅に付いて家族に生存報告を送り、一息つきます。 すると気になってくるのは、矢岳の手前に放置されていたリュック✕3つです。冷静になって考えてみるのですが、理由が思いつきません。 1.矢岳に登るためにデポした→ ✕:誰とも出会わなかった 2.デポして未踏の尾根道を探していた→ △:左右は崖で人の気配はなかった 3.想定不能の何かのトラブル→ ? もし「3」だとするならばかなりまずいです。ということで110に電話し、秩父警察署に通報することにしました。情報提供ということで電話で伝えるも、なかなか難しいので写真を送ることに。埼玉県警メール110番から画像とYAMAPの位置情報を付けて送りました。警察がどのような対応をされるのかはわかりませんが、何事も無いことを祈ります。 そうして電車が来たので西武秩父駅の祭りの湯へと向かうことにしました。 ■秩父警察に感謝! 祭りの湯で水風呂に入り乳酸を抜き、すぐに炭酸泉に浸かり血行を良くするを2度ほど繰り返します。露天風呂に向かい、お気に入りの寝湯に横になります。「なんて気持ちいいんだろう…」達成感もひとしおです。その後、お風呂を出て、フードコートで豚丼を食べ、レッドアロー号にのり池袋駅へと帰宅するのでした。 翌日、ランチで中華料理を食べていると見慣れない番号から電話が。 「秩父警察です。昨日はありがとうございました。本日あの場所に行ってみたところザックは3つともなくなっていたので、おそらくデポして何処かにトラバースしていたのかもしれませんね。」 『そうでしたか。休みの日に確認までしていただいた本当に有難うございます』 「いえいえ。ご協力感謝します。また何かありましたらご連絡ください」 秩父警察の皆さん、本当にありがとうございます。私の電話一本のために、何人かの方が矢岳までわざわざ往復され確認される。本当に頭が下がる思いです。こういった方々の手助けがあるからこそ、私たちは登山を楽しむことができるのだな、と。改めて感じました。 電話しなければ面倒かけずにすんだのにな。。。と思いつつ、「悪い方の想像が当たってたとしたら」と考えるとやはり電話してよかったのだろうと思いました。 #みなさんならこんな時どうされます・・? 私自身、警察やレスキューの手をわずらわせることが無いよう、これからも十分に事前準備をし山行へ行こうと気を引き締めた次第でした。 <まとめ> ということで、二度目の矢岳チャレンジは無事に「達成」となりました。 勝因は、事前準備を「これでもか!」と実施したことで、時間も体力も足もほんの少しの余裕をもってゴールすることができました。そしてもう一つは「涼しくなったこと」だと思います。これからの季節、夏よりもぐっと楽に歩くことができそうです。 #唯一の心残りは、3つ持っていった照明器具の出番はなく、500ルーメンと1600ルーメンの違いを実地で試すことができなかったことでしょうか^^ では! 次回はどこに行こうかな。秩父の魔境「熊倉山」。秘境の次は魔境か!?駅側からピストンなら難易度低そうですが。うーん^^; ▼秩父「秘境・魔境シリーズ」四部作はこちら 1.2018年9月8日:矢岳断念、烏帽子谷へ、霧、熊、そして私は遭難する https://yamap.co.jp/activity/2352183 2.2018年10月13日:秘境「秩父矢岳」再チャレンジ、無事達成! ※本レポート 3.2018年10月28日:魔境「秩父熊倉山」は静寂に包まれ https://yamap.co.jp/activity/2606031 4.2018年11月10日:【完結編】魔界「酉谷山から熊倉山」へ潜入 https://yamap.co.jp/activity/2675732
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