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あなたは何キロのザック背負えますか?(火打山登山道下見。)

ディスカバリーさん YAMAP Meister Black

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妙高山・火打山・藤巻山

2016/05/06(金) 17:42

 更新

あなたは何キロのザック背負えますか?(火打山登山道下見。)

公開

活動情報

活動時期

2016/04/23(土) 10:28

2016/04/23(土) 17:01

アクセス:943人

軌跡・時間・距離

軌跡データをダウンロード
累積標高上り 1,423m / 累積標高下り 1,432m
活動時間5:47
活動距離7.13km
高低差481m
カロリー2412kcal

写真

動画

道具リスト

文章

僕が毎週末、テントを背負ってどこかの山にあしげく通っていた若かった頃。彼女に一枚の写真を見せた。
ヘッドライトも要らない程の月明かりに照らされさざ波一つ無い高谷池。
湖面に映る満月、漆黒というより蒼く写る火打山。
その背景には無数に散りばめられた星。

登山を始めたばかりの彼女からは「こんな満天の星空の下でテントを張ってずっと星を見ていたい。」と言われ、「任せろ!そのうち高谷池の満天の星空を見せてやる。」と言ってしまった。そして「美味い山飯、酒も用意して…」と付け加えた。

時季は違ったが、彼女に雪原の高谷池、火打山を見せたくてテン泊に誘った。
彼女のザックは買い揃えたばかりのシュラフとマット、ダウンジャケットなどの防寒具だけ。
僕のザックはテント、二人分の食材、酒、そして自分の防寒具、シュラフ等で60㍑のザックはパンパン。加えて二組のアイゼン、スノーシューなど20㎏をゆうに超えている。
ソロでのテン泊はせいぜい15㎏以下の装備である。テン泊の経験を積むほどに不要なものが淘汰されザックの中身は食材と水を補充するだけとなっていた。
しかし今回は特別な山旅である。山を始めたばかりの彼女に重いザックは無理だろう。初めてのテン泊を楽しい思い出にしてやりたい。
ほぼ二人分の荷物を背負ってみると腰と肩にグッと荷重が掛かる。
(ゆっくりと登れば何とかなる)と僕はタカをくくっていた。

笹ヶ峰の登山口から歩き始めて二つ目の沢を越えた辺りから(ゆっくり登れば…)と言う考えが甘かったことに気づき始めた。
急登でも無いのに足が上がらない。息はそれほど乱れていないが、足と腹にグッ、グッと掛かるザックの重量。

今さら彼女に戻ろうとは言えない。僕は彼女の手前、苦しさを悟られないよう歩き続けた。
たまに木道の境目の雪の空洞に足を取られ、その度に重いザックがバランスを乱し体が大きく傾く。
僕はそのまま雪の上に倒れ込み暫く空を見上げていた。
ブナの新芽の緑色と初夏のような陽射しが少しは身体と不安な気持ちを楽にしてくれる。
春の空気を胸一杯吸い込み、重いザックを一気に抱えあげ、また一歩、また一歩。
僕の後ろで「この前まで雪かきしていたのが嘘みたい。あっという間に春だね。」と彼女が呟いた。

4つの沢を越えて、最後の黒沢でおむすびと、雪を解かして沸かしたてたお茶で昼食を済ませた。

黒沢の橋を渡れば、いよいよ心臓破りの急登、十二曲がりが待っている。
暫くはトラバース気味に高度を稼いでいく。
せいぜい2、3人だろうか、登山者のトレースはあるが、今日のものではない。そのトレースも暫く行くと方々に散らばって行った。目印のテープもない。
夏道の十二曲がりはまだ残雪の下。地図を確認すると十二曲がりの尾根のもう一つ左側の尾根を直登しているようだ。この尾根をそのまま登っても稜線に出るはずだが、夏道を目指しやや右寄りに登って行くと彼女が目ざとく「あれ十二曲がりの夏道じゃない?」と指を指した。
彼女は僕より先にまわり、そのまま急登を直登していった。
僕も笹薮に掴まり、上がらない足に一気に力を入れながらノーアイゼンのまま着いていく。
十二曲がりの7/12辺りだろうか、僕は笹の葉の上の雪に足を取られ、その瞬間、重いザックから先に体が弧を描き十数メートル滑落。止まらない!
やっと体が雑木に引っ掛かり停止。
数メートル登り返してはまた別なポイントで滑落。
呆然としたまま先を行った彼女の方向を確認した。彼女は十二曲がりの終わる稜線手前の夏道で僕の様子を伺っていた。
彼女の待つ所まで息絶え絶えに登り返すと彼女が僕に手を差し伸べた。
「バカねえ、無理して私の分の荷物まで背負って。」「明るいうちに高谷池ヒュッテまでは無理よね?」
そして彼女は少し間をおいて「戻ろう、山は逃げないわよ。また来よう。でもね、私がもう少し重い荷物背負えるようになるまで待っててね。」

僕らは来た道を戻り始めた。ザックの荷物は変わらないが、心なしか足取りが軽くなった。

あれから十年が過ぎた。
今、僕は彼女と小学生になった息子と三人でテントを背負って十二曲がりを登りきった。谷間から心地よい風が吹き抜けた。

あの時のザックの重さと引き換えに家族の重さを背負い、パンパンに膨らんだザックの代わりにパンパンに膨らんだ幸せを感じている……

貴方は愛する人のため、どのくらいの荷物を背負いますか…

って、このショートストーリーはフィクションです。
GWのNGTテン泊ツアーの下見と、20㎏ザック背負ってのトレーニングでした。

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