めぐりあい宇宙 ブナ編(中倉山)

2017.02.19(日) 日帰り

チェックポイント

DAY 1
合計時間
5 時間 7
休憩時間
35
距離
10.4 km
のぼり / くだり
881 / 909 m
1 50
30
56
39

活動詳細

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俺は流行りのものが苦手だ チヤホヤされているものがどうも不得意だ オロ山が雑誌に載っていたのはもう15年位前だったろうか ある山雑誌のマイナー山旅の勧めみたいなコーナーで1ページの三分の一ほどの記事だったと思う スカーンと開けた展望を持つその峰々はずーっと心の奥底でくすぶり続けてきた いつか冬に登りたいなと思っていたが仕事や家庭のあれこれで冬山のホームグラウンドの那須以外なかなか時間が取れなかった だがとうとうその時がやってきた 最近有名なブナの木もあるらしい 過酷な状況に立つ木などいたるところに有る 一体何がそんなに魅力的なのだろうか? 正直写真写りが良いだけなのでは無いか 世の中、一本だけ残ったものに注目し過ぎやしないか そんな程度にしか考えていなかった 林道を小一時間歩き登山道に取り付く 今日はてんくらの予報ではC判定 風が相当強いらしい でもやっぱり冬山には烈風が無くちゃちょいと物足りないじゃ無いか 稜線まではひたすら急勾配の登りが続く 一気に高度が上がる 南斜面は風が穏やかで汗が吹き出る 稜線に上がると先程までが嘘のように強風が体を揺さぶる 乾いた寒風だ 雪の男体山が気高くそびえる バラクラバを被り中倉山山頂へ 景色の良さが刺ささりつける強風を忘れさせる 遠くに美しい裾野の富士山が鎮座する 荒れた足尾の山々 北側斜面の崖模様と南斜面の緩勾配が対象的だ 雪をまとった岩肌が美しい この先を下れば例のブナの木だ 孤高のブナと言われるその木は葉を落としても絵になっていた 鉱毒に耐え、寒風に耐え、北側斜面の崩落の恐怖にも耐え、確かにその木は存在した 想像以上に大きな枝振りだった お決まりの南斜面からの抜けるような青空バックのベストショットを戴く 最後にブナにタッチしてお別れを告げようとしたその時 飛んできたスリッパが壁を突き破るほどのと表現するのが適当なほどの烈風が襲いかかる 目が開けられない呼吸もままならない烈風である とっさに身をかがめブナの根元にしがみつく 30秒は吹いていただろうか 枝々が咆哮する 負けない この木は負けない しがみついたままふと見上げる 紺碧の空に根をはるブナ そうにしか見えなかった その瞬間ブナと俺は100年を いや1000年を語った この広大な宇宙の真ん中で 確かに二人は時を超えた 風が途切れたその隙に後ろ髪を引かれながら山を下りた また次のシーズン とびきり風の強い冬の日に 会いに来ようと思う その時はもう一度俺を守って下さい それまでお元気で

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