活動データ
タイム
07:02
距離
10.6km
のぼり
1152m
くだり
1156m
チェックポイント
活動詳細
すべて見る四国では非常に人気の高い「寒風山」。 この寒風山に登るには、桑瀬峠を経由する通常ルートと笹ヶ嶺からの縦走ルートが存在するが、地図には載っていない「裏寒風」というバリエーションルートが存在する。そして「裏寒風」にも「西尾根ルート」と「トンネル西口ルート」と呼ばれるコースがあり、今回は雪山登山の偵察を兼ねて「トンネル西口ルート」から登ることにした。 駐車場はいつものように、寒風山トンネル東口(瓶ヶ森林道入り口)を利用する。身支度を済ませ、午前6時50分に出発。旧寒風山トンネルを歩いて通らねばならないのだが、古いトンネルで照明整備が無いため中は真っ暗。天井から滴る水の音と相まって、さながら洞窟探検をしているような気分になる。10分程でトンネル西口に到着し、すぐ脇に標識も何も無い登山口らしき場所が目に入る。バリエーションルートの入り口らしく、草が覆い茂り、その存在を隠しているようである。 ここでいつもの覚悟を決める。 「藪漕ぎ上等!」 登山口こそ草が覆い茂っているが、そこを通り過ぎれば草は無く、薄い踏み跡が付いている。そしてすぐに「立ち入り禁止」のテープが張られた場所に行き当たる。そう、ここから先は登山道ではない訳で、何が起こっても自分が責任を取り、自分で解決するしかないのだ。 決して興味本位だけでは立ち入ってはいけない場所なのである。 今回のルートは地図上に記載はなく、またYAMAPの活動記録でも目にしたことがない(…と思う)。 そこで某レコから以前登られた方のGPSログをダウンロードさせて頂き参考にすることとした。 ログを頼りに、立ち入り禁止のロープが張られた場所から枯れ沢を登って行ったのだが、10分程進んでルートから外れている事に気がつく。もう一度立ち入り禁止のテープが張られた場所に戻り、辺りを観察する。すると対岸にピンクリボンを発見する。沢を渡るなんて情報は無かったのだが…。 そこから先はずっと急登。この日は鳥のさえずりも、虫の鳴き声も無く、聞こえるのは自分の激しい息づかいのみ。これこそ「リアル・マゾスタイル」である。 急登が終わると再度「立ち入り禁止」のテープが張られているが、もう後戻りはできない。目の前の大岩に設置された、通称「橋本ロープ」を使ってよじ登る。(この通称「橋本ロープ」は、寒風山をこよなく愛し、ボランティアで整備してくれている橋本さんが設置してくれているロープである。寒風山の通常ルートに設置されているロープやアルミの梯子は全て橋本さんが整備してくれているというのは有名な話である。) こんな調子で、歩くよりも登るという動作を繰り返し、そして第一展望所に到着する。この場所からはいつもと違う寒風山の裏側を眺める事ができる。 ゆっくりと休憩したいところではあるが、午後からは雨の降る可能があるため先を急ぐ。 ここから先もとにかく登るのみ。難しく危険な箇所にはロープがあるので、思っていたよりも危険度は低い。ただ、木の根っこや枝に引っかかり転倒でもすると崖を転がり落ちてしまうので、細心の注意が必要である。 バリエーションルートにソロで登るということは、絶対にケガをしてはならない状況である。とにかく集中力を切らさない事が大切だと自分に言い聞かす。 そんなこんなで第二展望所も通過し、僕が一番経験したかった、急斜面をトラバースする箇所に辿り着く。 ここは積雪期に登る際の核心部であり、小規模ながら雪崩れが起こるとの情報もある。どんな場所か見ておきたかったのだが想像通りの急斜面で、積雪期だとフィックスロープを張らないと通過できないことがよく分かった。 急斜面のトラバースは思ったよりも長く、途中、小さな沢を横切ったりするので、足を滑らさないよう、かなり慎重に歩くことを余儀なくされた。個人的には、ロープが設置された岩を登る箇所よりも、このトラバースが一番危険に感じた。 急斜面のトラバース箇所を過ぎると今度は藪漕ぎ開始のゴングが鳴らされる。 藪漕ぎという行為に対しては、最近、馴れというか諦めのような感があるが、足下と進む先が見えないことからくる精神的苦痛にはまだ耐性がないということがよく分かった。 進んでは赤テープを捜し、そしてGPSを確認するという作業をひたすら繰り返す。 余談ではあるがiphoneのGPSはかなり優秀である。iphone以外使ったことがないので他の端末のことはよく分からないが、iphoneに関していえば、GPSの捕捉が出来なくなったり、現在地が狂ったようなことは今まで一度も無い。 藪漕ぎの次はザレ場の急登。今回はソロだし後続者もいないので、遠慮無しに石を落としながら登って行ったが、後続者がいる場合には、必ず距離を開けて進んだ方がいい。この場所は注意しても絶対に石を落としてしまうので、要注意である。 ここを過ぎるとやっと笹の稜線に出る。ここからは勿論笹漕ぎ。踏み跡は薄っすら付いているので迷うことは無いのだが、笹が濡れていてズボンはびしょ濡れ。防水性もしくは速乾性の優れたズボンでないと厳しいと思う。 笹の稜線を過ぎると最後の急登。ここでも橋本ロープが大活躍。相当な距離、補助ロープを設置して下さっており、安心して登る事ができる。 そして、やっと通常ルートと合流する。 まだ山頂に到着していないが、早くも「達成感」と同時に「安堵感」が込み上げてくる。 寒風山山頂には9時50分に到着。スタートしてから3時間。ちょっと時間が掛かり過ぎであるが、とにかくケガすることなく無事に登れた訳であるから上出来である。 山頂からの展望はなく、すぐに桑瀬峠に下ろうと思ったが、まだ時間に余裕があるので、笹ヶ峰まで足を延ばすことにする。 先日拝見したモリヤンさんの記録で、橋本さんが草刈りをされていると書かれていたが、笹ヶ嶺の山頂近くまで綺麗に笹が刈られており、お陰で気持ち良く歩くことができた。橋本さんには本当に感謝しなければならない。 しかしながらこの道中、二ツ岳に登った時に痛めた膝が再び痛み始めた。最初は違和感であったが、次第に痛みへと変わってきたのだ。登りでは大した痛みではないのだが、下りになると痛みが激しくなる。休憩を取りながら騙し騙し、ヨロヨロの状態でようやく笹ヶ峰山頂に到着する。時刻は11時10分。 ここで昼食を摂りながら休憩と考えていたのだが、どうも雲行きが怪しい。いつ雨が降ってもおかしくない状況なので、昼食を摂ることを諦め下山することにした。 さて、どこから降りようか…? 寒風山に戻ることも考えたのだが、今日はピストンする気分でもないし、天気が崩れそうな時の尾根歩きは少々不安である。かと言って、膝に痛みを抱えつつ、笹ヶ峰の南斜面を下るには勇気がいる。 しかし、僕の登山スタイルは「リアル・マゾスタイル」。 例え人に指を指されて笑われようが、馬鹿にされようが、痛み・苦しみを真正面から受けて立つのが、リアル・マゾスタイルというものだ。 いや、本当はそんな事はしたくはないのだ。山ガール達と楽しく笑いながら、オシャレにスマートな登山を楽しみたいのだが…。 急斜面の登山道は、笹、笹、笹、笹、笹しかない。登山道も見えない。 この笹ヶ峰を人間の陰部に例えたなら、この笹は陰毛であり、笹ヶ峰はまれに見る剛毛である! 痛みからかそんな狂った妄想にふけながら、剛毛を、いや笹を掻き分け下山を急ぐ。 笹を掻き分け進むだけも大変なのに、かなりの傾斜で、膝の痛は増すばかり。涙が出そうだ。 こんな時には「俺はマゾだ。痛みが増す程うれしいはずだ!」と自分に言い聞かせ、笑顔を絶やさないようにする。周りから見れば「かなりヤバい中年オヤジ」であるが、このオヤジの中では壮絶な戦いが繰り広げられているのだ。許して欲しい。 長文になり、もはや何を書いているのか分からない(笑) もういい。とにかく、膝の痛みに耐えながら、あの急斜面を泣き笑いしながら下ったのだ。景色なんてものには目もくれず、何とか13時に笹ヶ峰の登山口に無事帰還。地獄のような時間であった。 最後に林道歩き30分というデザートを堪能し、寒風山東口の駐車場に到着。 色々あったが、今回も色々な意味で内容の濃い山行、いや修行であった。 最後に、裏寒風は踏み跡も付いているので迷う危険は少ないと思うが、ルート確認をしないと不安になる箇所が幾つかあるので、過去に登った方のGPSログを参考にできるようにしておいた方が良いと思う。 体力的には石鎚東陵ルートの倍、難易度は東陵ルートと同等といったところではないだろうか。 バリエーションルートなので人にお勧めすることはできませんが、条件が良い時で、それなりの装備があれば、決して登れないルートで無いと感じました。 紅葉の時期にまた登ろうと思っています!
もしも不適切なコンテンツをお見かけした場合はお知らせください。