後立山縦走 Part1(爺ヶ岳~白馬岳/3テン泊4日)

2015.09.26(土) 日帰り

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【前夜】 連休なんて取れないと諦めていたのに、なんと仕事も会議も来客も何もない! そんなわけで慌ててパッキングして、僕は午後4時の新幹線に飛び乗った。 行き先は、ずっと暖めていた「The GOTATE」。後立山のキレットを堪能し尽くしましょう! 今回は3泊4日のテント泊縦走装備。 昨年9月に北穂~槍ヶ岳を縦走した時も同じく3泊4日のテント泊だったが、50Lザックに16kgの装備だった。 この時、大キレットで身体が振られて苦労した教訓から、今回は極力装備を軽くした。 それはズバリ、食料を減らす作戦。 昼食と夕食を山小屋で頂くわけだ。朝食は乾麺とフリーズドライにするので、 クッキングセットはお湯を沸かすだけに特化してエスビットとチタンマグを持っていくだけ。 その他の見直しを含めた結果、40Lザックに装備が収まり、水込み13kgのパック重量となった。 【初日】 扇沢は大勢の登山者と観光客であふれていた。 僕は、靴紐を締め直すと気持ちにスイッチが入る。 さあ、いよいよ山旅が始まるんだと集中力が増す。 このとき僕の脳内には、コルチコロトピンが出まくってるんだろうな。 プランニングやパッキングしてる時は、これからの山旅を想像してウキウキする。 そんな僕の脳内ではチロトロピンが溢れてる。 ちなみに今こうやってレコを書いている僕は、この4日間を振り返りながら充実感を味わってる訳で、 ドーパミンがだだ漏れしているのだ。いや、ただ酔ってるだけか(笑)。 ええと、なんの話だっけ。 そう、柏原新道の登山口から入山した僕は、いつものように身体が暖まるまでスローペースを維持した。 登山道は人が多く、次々と僕を追い越してゆく。ううむ、これはもしかしたらマズイんじゃないか?と思い始めた。 というのもザックにマットを外付けしている、つまりテン泊装備の登山者がとても多いのだ。 これはテン場が込むのじゃなかろうか。そう考えると次第にペースが上がって行った。 予感は当たった。 冷池山荘に着いたのは14時。受付には大勢の登山者が並んでいる。 僕も最後尾についたその時、スタッフが大きな声でこう言った。 「テント場はすでにキャパを超えています。張れるかどうか分からないので、 先にテントを建ててから受付に来てください!」 その瞬間、恐るべき競争が始まった。 山荘から250mの距離を登る山道を、一斉に何人もの登山者が駆け上ることになったのだ。 僕は受付の列の最後尾にいたので、ウルトラクイズの早押しのごとく、スタッフの言葉が終わる前に駆け出した。 先頭を往く僕の後ろから、幾つもの靴音が恐ろしい勢いで迫ってくる。 コルチコロトピンはどこにいった。 もうホルモンバランスは狂いまくり、心拍数はマックスだ。後を振り返ると、 恐ろしい形相の太目のオバサンが僕をにらみつけながら登り迫ってくるではないか。 恐怖に駆られた僕は、乳酸が溜まり痙攣する足を必死に動かした。 なんだ。なんなんだよ、これは~。 ようやく辿り着いたテン場は、足の踏み場もなかった。 が、それでもスペースを何とか見つけ張ったテントは、右に大きく傾斜していた。 そして翌朝、僕はテントの横壁に顔をくっつけた息苦しさと、こわばった太ももの痛みで目を覚ますことになる。 【2日目】 あわよくば2泊3日でこのルートを行こうかと目論んでいた。 のんびりペースで4泊、きっちりコースタイム通りで3泊の行程だ。 しかしこの状況なら2泊3日は諦めて、今日のテントを早めに建てる方がいいだろう。 よって本日は、鹿島槍ヶ岳から八峰キレットを抜け五竜山荘までの行程とした。 午前5時にヘッデンを点けて歩き始めた。 鹿島槍の手前でご来光が射しだした。振り向けば、昨日歩いた山稜が素晴らしいモルゲンロートに輝いている。 鹿島槍を過ぎ、今日の核心部「八峰キレット」にきた。正直たいした感じはしなかった。 しかし今回の岩稜帯は危険なルートには違いない。 なにせ磨かれて滑りやすかったり、モロかったり、はたまた砂礫が乗っていたりと、 とにかく色んな顔を見せてくれる。単に切り立って高度があるというだけではないのだ。 バランスを崩すことも、躓くことも許されないという緊張感が、その後のG5・G4から五竜岳までと続いた。 出発して8時間、午後1時に五竜山荘に着いた。 予想通り、テン場は混雑している。それでも昨日よりは余裕で平坦なスペースにテントを張ることが出来た。 ちなみにこの日が混雑のピーク、午後3時には「テント泊お断り」の張り紙が出された。 【3日目】 縦走も3日目ともなれば足も慣れ、楽しさもピークだ。 今日は今回の山旅のハイライト、唐松岳から不帰キレットを抜ける。 2年前の10月に八方尾根から唐松へ登ったのだけれど、丸山ケルン辺りから眺めた不帰キレットには恐れを抱いたものだ。 それでも、いつかはあそこを、と思っていた。 今回こんなに好天の中、憧れのルートを歩ける幸せを僕は今更ながらに噛みしめた。 後立山連峰のうちこのエリアは、黒部側からの烈風で巨大な雪庇が形成され、崩壊を繰り返すことで、東側が切り立ち西側はゆるい斜面の、いわゆる非対称山陵が多い。難所ではあるが、その山陵に身を置き眺める景色の雄大さは、とても言い表せない。 不帰三峰、二峰、一峰と岩場の登り下りを繰り返しながら、強い緊張感の中に僕は不思議な多幸感、充足感を味わっていた。 頭の中は、空っぽだ。 幸せってやつは、頭で感じるものじゃないんだな。 まさに心で、身体いっぱいで感じるものなんだ。 Don't think, Feel ! 心がいっぱいのまま今日の宿泊地、天狗山荘に辿り着いたのは午後1時半だった。 【4日目】 今日が小屋閉めの日だという天狗山荘。 北アルプスの秋はもう終わろうとしてるし、今回の山旅も終わりが近い。旅の終わりは、いつも切ない。 まわり道でも、旅の終わりに君にもう一度、会えたらいいね。千春の唄が頭の中をリフレインする。 僕はいま、誰に会いたいんだろ。 最終日も見事な秋晴れだ。 美しい白馬三山へ向かい、僕も晴れ晴れとした気持ちでスタートを切った。 やがて最後の登りを終えて白馬岳の頂上に立つと、その向こうにはまぁるく日本海が広がっていた。 南にはこの4日間歩いてきた山々が青く稜線を描いている。 あ~、こんなに歩いてきたんだ。 こんなにも歩き切ることが出来たんだ。 うれしいなあ。 誇らしいなあ。 有難いなあ。 山にいると、自然と感謝の念が湧くし、いつもより素直になって、自分を好きになれる。 自分の醜さも、愚かさも含めて、自分を受け入れることができる。 明日からまた頑張ろう、山にいるときと同じように過ごせるよう。 そうして今回の山旅も終わったのでした。ちゃんちゃん。 【あとがき】 山はいいなぁ 頭がからっぽになって 心がいっぱいになる。 さあ、次はどこ行こう。 それはやっぱり Part2 でしょ!

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