活動データ
タイム
10:28
距離
17.0km
のぼり
1613m
くだり
1614m
活動詳細
すべて見るもともと10年前ほどにSKさんとの会話で膨らんだコース取りだった。けれど、誰しも同じ構想を抱くようで、ちょっと検索してみると全く同じプランの山行レポートがいくつもヒットする。 楽ちん山行とはこのことで、リフトを2本つないで山頂駅に立てる。ただし、大荷物をもってのリフト乗車は乗降が大変。乗車中にしても、冬山フル装備の重量に自分が耐えられるのかという不安が頭をよぎり、冷気が気温以上に身にしみた。 山頂駅からの展望はいきなりパーフェクト。御岳・乗鞍を真正面に、遠く白山が望めた。捨てがたい展望にいったん見切りをつけて滑走コースを降りていく。頃合いを見計らって鉢盛山南尾根に乗り換える。ここからが真剣勝負、山ヤの世界。雪面はノー・トレース。バージン・スノーランドに踏み込んだ。見上げる位置には小鉢盛山はもちろん、反射板を乗せた鉢盛山のストライクゾーンが見えるぞ。右を見れば八ヶ岳。歩くうちに中央アルプス、南アルプス、そして富士山の山頂付近が目に飛び込んでくる。 そうとなれば、こちらもテンションが上がる。青空の群青と、雪の白のコラボが、さらにモチベーションを高めてくれる。前回、下山に使った鉢盛山東尾根の山腹に絡んで林道が鞍部に向かって首をもたげていくのも見える。しかし、ザックの重荷が足を引っ張る。おまけに小鉢盛山直前のだましピークが私を欺く。どうにかこうにか今夜のテント場の山頂に届いて荷を下ろした。ほっと一息。 ここからはスノーシュー歩きとする。行動用のベーシック装備を担いで新たな歩を刻む。小鉢盛山には同じような標高のポイントが3つ並び立つ。その先は次々と方向を変える激下りの尾根になるので侮れない。ナビを見ると面白くないので見ない。慎重に地図をチェックして針路を決定するわくわくスリル感を満喫しよう。 コルからの登り返しが鬼門だ。だが、疲れを感じている暇はない。歯を食いしばって一歩一歩進むと突然神が舞い降りた。陽光の射した明るい雪稜に疎林が立っている。快適に歩を進める。さしづめハイキングなら鼻歌でも出ようというものだ。 ようやく反射板が近づくとダイレクトに山頂に飛び出した。いや、待て。見慣れた景色はそこにはない。展望盤も山名標示も三角点の標石も、すべてが深い雪の中。反射板へと歩いていく。好展望とわかっていてもさらなる感動が待っていた。御岳、乗鞍の独立峰群はもちろん、穂高、槍など北アルプスエリアの主役級が居並ぶ絶景は言葉を超えて崇高だ。 時間を忘れて眺めていたいのはやまやま。しかし、ここからは日没との競争になる。思い腰を上げて往路を辿るが、心なしか足取りは軽い。ただただトレースを追えばいい。ルート判断しなくて良いというのは全くもってありがたい。 小鉢盛のテン場に戻ってテントを設営する。テントに転がり込むと同時に日が落ちた。夜は長い。野菜たっぷりの鍋ってのも工夫がないが、ぐつぐつ煮える鍋に春菊が香り立ち、最高の出来だったと自画自賛しておこう。持ち上げた赤ワインに、種つきのオリーブのマリネが相性抜群。この頃マイブームの缶つまは「牛タン焼きのねぎ塩だれ」。これはベストチョイスだった。一日を終えて報われるのはこんなご褒美があるからこそだ。ただし、舌鼓を打つのに夢中で、うっかり行動食の「よもぎあんぱん」をおしりで踏みつぶしたのは失点1。 さてさて、冷たい風が流れる山頂のはずだが、ここはうってつけの風裏らしい。夜半、風の音はそれなりでも、テントはゆらりともしなかった。そして今日は新月。お約束の満天の天体ショーはお金では決して買えないぜいたくだ。 翌朝、テント内のミネラル・ウォータのボトルが凍りついていた。雑炊を作って身体を暖める。テントをたためば、いよいよ下山。スキーヤーやボーダーの喧騒を聞いてようやく半ば夢から覚める。ゲレンデから振り返る山頂稜線や小鉢盛山はいつでも戻っておいでと手招きしているようだった。
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