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観音峰〜稲村ヶ岳 テント泊縦走

たつさん YAMAP Meister Silver

  • YAMAPマイスター:シルバー
  • 自己紹介:未記入
  • 活動エリア:
  • 性別:男性
  • 生まれ年:1985
  • 出身地:
  • 経験年数:3年未満
  • レベル:公開しない
  • その他 その他

大普賢岳・山上ヶ岳・稲村ヶ岳

2016/05/14(土) 07:42

 更新

観音峰〜稲村ヶ岳 テント泊縦走

公開

活動情報

活動時期

2016/03/02(水) 10:38

2016/03/03(木) 11:58

アクセス:319人

軌跡・時間・距離

軌跡データをダウンロード
累積標高上り 1,889m / 累積標高下り 1,775m
活動時間8:26
活動距離15.21km
高低差945m

写真

動画

道具リスト

文章

3月1日 曇り。

阿部野橋から特急電車に乗車すると、
下市口駅までは約1時間の道のり。

列車の窓から見る景色が流れ去っていく。
都会のゴミゴミした景色から少しづつではあるが、遠のいていくのがわかった。

窓から見える景色が田舎に変わり、
暫くして下市口駅で列車は止まった。
バス停にたどり着くと、間も無く洞川温泉行きのバスが、颯爽とロータリーに飛び込んできた。
このバスに乗る登山者は僕一人だ。

と、そこに何やら騒がしく駆け込んでくる明るい三人組の女性。
60代前半くらいの女性だろうか。
服装からすると、登山に行くようだ。
目的地が違うのだという事が解ったのは、バスが出発した約30分後の事だった。
「次は広橋峠」、、「ピンポン♪」、、
「次、止まります」
明るくて上品な声のアナウンスの女性はどんな人なんだろう。
ふと考える。業務的だが、印象は良い。


下車した女性たちは、満面の笑顔でバスを飛び出し、足早に歩き出していった。

そこからさらに30分ほどバスに揺られ、見覚えのある景色が現れると、雪が積もりだした。
そこから10分ほどで、目的の観音峰登山口にたどり着いた。
下車したのは僕、ただ一人だ。
もっとも、先ほどの三人組の女性以外は、誰一人乗車してこなかったのだから、それは当たり前の事なのだが。

昔、白の平キャンプ場に遊びにきた時、
ハイカーが登山ついでのキャンプをしているのを見かけたことがある。
その時は、ゆっくりキャンプをしたほうが楽しいのにと、小さな世界で生きる自分を、今は恥ずかしく思う。

登山口に着くと、まず見えるのはみたらい渓谷に架かる橋。
真っ白く続く長い橋は、僕を誘い、迷い込まそうとしているかのような風貌だ。
僕は迷いもなく手前の休憩所で、身支度を整え、肩からカメラを背負い出発した。
ゆらゆら揺れるその天国へ続くような橋は、僕の気持ちを高ぶらせた。
初めて入る山に、敬意を払いながらシャッターを切る。
一枚一枚慎重に。確実にシャッターを切っていく。

登り始めて間も無く、じんわり出てくる汗に反し、北からの風が頬をひんやりさせる。
身体は暑いが、顔は寒いのだ。
上はロンT一枚だが、厚手のマフラーを巻きつけ、なんとも滑稽な服装の人間を、
笑う人間なんて周りに誰もいない。
聞こえるのは鳥のさえずりと風の音。
とても静かで、空気が澄んでいる。

しばらくすると開けた道に差し掛かった。
見る景色が変わりゆくのが登山の醍醐味だ。

見えたのは、一つ目の目標、観音峰。

不意に現れたその力強い佇まいは、
自分の心を遥かに上回り、思わず唸りをあげてしまう。
展望台から見える観音峰は、とても凛々しく、とても律儀だ。
その律儀さはのちに裏切られるような形になるのだが、
その時点では、一心不乱にカメラを向けた。

シャッターを数枚切り、観音峰を眺める。
しばらくし、お辞儀をひとつ。

そこに見える目標を目指す。

見え魚は、釣りにくいというが、
山もそうである。
なかなか思ったようにはたどり着けないのだ。

程なくして、先に何やら黄色い看板が見える。
観音峰山頂にたどり着いたようだ。

ここで観音峰に裏切られる。

あんなに雄大で、どっしりと構えた山頂の景色は、その道の延長上にあるだけだった。
人工的な黄色の看板が無ければ、ここが山頂だと気づかず、通り過ぎてしまう事だろう。

少しがっかりはしたが、やはり山頂は山頂。
風は少し強まり、静かに肌寒さで山頂を告げていた。

先を急ぐ。

しばらく歩くとトレースが急に道を外れた。
地図によると直進のはず。
何かあるのかと少し不安になる。

とりあえずトレースを信じ、先導者に従うと、
そこには素晴らしい景色が広がる、隠れ展望場が現れた。
景色が見えたのと同時に、そこには荷物を広げ、暖かいコーヒーを飲む男性登山者がいた。
お互いに存在を確認すると、ひとつお辞儀。
「天気良くなりましたね」
「ガスが少し取れてきたので、気持ちが良いです」と男性。
話を少しかわし、やはり道はそのまま尾根をまっすぐ進めば良いと教えてくれた。
トレースのない道をひたすら進み、
法力峠を、目指す事にする。
男性はとても親切に山の事を説明してくれた。
本当に山が好きなんだな、と思い返しながらラッセルし続けた。

トレースが付いていない道は、足の膝上まで雪にはまる、いわゆるツボ足だ。
法力峠まで続く尾根は、歩行を困難にした。
こんな経験は初めてのことだ。
下りこそ楽しく進むことができているが、
上りのことを想像しゾッとする。

新雪をガシガシ進むと、分岐点が見えた。
そこが法力峠という事は、看板が無くともすぐに悟った。
そこには母公堂から、稲村ヶ岳に向かう足跡が、うっすらと続いていた。

ひと山越えた事を実感すると、身体が疲れている事に気づく。
もう少し進み、そこで休憩しようと考えた。

もちろん稲村小屋を目指す。

進む事でいろんな出会いがある。
人こそいないが、動物の足跡だったり、
橋がかかっていたり、不思議な形をした木に出会う。

「これはすごい。」
思わず独り言を発してしまう。
マンモスツリーだ。
目もあり、牙もあり、鼻を高らかと押し上げ、
その鼻先には、しっかりとした木が伸び続けていた。
なぜそのような生き方になるのか見当もつかないが、
何か生き様を感じる。
その悠々たる木の幹に触れ、
そしてまた先を進む。

一度刻まれた足跡は、先日から降ったであろう雪で、少し見えずらくなっていた。
はっきり見えるのは小動物の足跡。
時に、黄色く凍りついた小便のあとがあり、
凍りついた糞が所々に見受けられた。
人間が歩きやすいところは、動物も歩きやすいのだろうか。
いや、先に歩いたのは動物だろうか。
動物が歩いた場所を、人間の方が利用したのだ。
迷惑をしているのは動物の方なのかもしれない。

法力峠から歩く事、約一時間半、思わぬ難関に差し当たった。
道にかかる橋のその先には、動物の足跡さえ有りはするが、
垂直斜面そのもの。
下を見ると崖になっており、落ちると怪我は免れないだろう。
左手を山にし、右側が崖。
その道は10メートル足らずの距離ではあるが、恐怖からか遠く感じる。
意を決してアイゼンを登山靴に縛りつけ、ピッケルを左手に、橋を渡った。
橋の先の斜面に差し掛かると、一瞬足が止まる。
まずはピッケルを斜面に打ち付け固定。
左足を雪に蹴り込み固定。
右足をその先に蹴り込み固定。
30センチメートルずつ慎重に、一歩一歩確実に足場を作っていく。
繰り返し繰り返し、約20分。
とうとう斜面の先にたどり着いたようだ。
振り返り、自分が歩いた道を実感した。

同じような場所をさらに2箇所ほど越え、
やっと見えたのは稲村小屋だった。

ほぼ計画通りの16時前にたどり着いた。
その頃には、雲ひとつない青空がそこには広がっていた。

寝床となる場所を探し、天幕を設営。
少し冷えていた事もあり、持ってきた梅酒を温めすする。
至福の瞬間だ。
少し落ち着いたところで、外に出てみると、
先ほどの景色と打って変わり、
山全体が桜色に輝いていた。

樹氷は夕日によって、白色から桜色へと姿を変え、
言葉にできないほどの景観が広がり、
太陽がとても眩しかった。

感極まり、柄にも無く思わず泣き出しそうになる。
しばらくすると、太陽は遥か遠くの山々の先に、
惜しみなく姿を隠していってしまった。

太陽が姿を消し、薄暗くなった頃に風はピタリと止み、
動物達も穴倉に帰ったのか、一切の無音。
時が止まったように思えた。

稲村ヶ岳登頂を明日に備え、
今日は早めに就寝する事にした。

夕飯を済ませ、持ち込んだビールとワインで眠気を呼び寄せ、
疲れていた事もあり、寝袋の中に潜り込むと、気がつけば眠ってしまっていた。

真夜中にふと目が覚めた。

眠る前には穏やかだった天候は、
時間とともに豹変し、とても風が強くなっていた。
初めてのテント泊で(金剛山で特訓をしたにせよ)とてつもない不安に襲われた。
明日の天候の事をを考えると、
山頂を断念するか、あるいは帰り道が吹雪に見舞わられ、下山するのも困難になってしまうのではないか。
考え出すと悪い方へ考えが膨らみ出し、
眠ろうとするが風の音で目を覚ましてしまう。
気がつけば、テントの周りが少し明るく、
夜明けがすぐそこまで近づいていた。

就寝前より少し肌寒く感じたので、
暖をとるためにテント内で湯を沸かし、
コーヒーをすすった。

さらに明るくなった事を確認し、恐る恐る天幕から顔を出すと、
そこには朝日が顔を出そうという瞬間だった。


3月3日 快晴。

僕が天幕から飛び出すと同時に、
昨日隠れてしまった反対方向の山々の隙間から、太陽が顔を出した。
雲ひとつない空に昇っていく太陽の光を浴びながら、本日2杯目のコーヒーをすすった。

もちろん、稲村ヶ岳山頂を目指す事は言うまでもない。
軽く朝食を済ませ、登頂用の荷物と、
不要な荷物は天幕にしまい、出発する事にした。

そこからの道のりは行きの道と同様に、
確認できる足跡は小動物のそれと、凍った糞と小便の臭いのみだ。

高度感が増す中、低い植物の枝をかき分け、
鉄塔が見えてきた。
山頂にある展望台だろう。
山頂を目前にまず思ったのは、
いったい誰が、どうやってこの展望台を建てたのか、とても不思議に思えるほどの、立派な代物だった。

いよいよ、その山頂の展望台にまたがると、
そこには雲ひとつと無い濃紺の空が広がり、

「地球がその宇宙に浮いていた。」


濃紺の空は、僕の心を浄化し、
遥か遠くの宇宙に僕を連れ去っていった。





長文をお読みいただきありがとうございました。

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