活動データ
タイム
10:59
距離
54.3km
のぼり
2696m
くだり
2697m
活動詳細
すべて見る3週間ぶりに週末の休みが取れた。 いそいそと車へザックを放り込み、金曜の夕方に家を出た。行く先は鹿児島県出水市。古い友人が出水に移り住んで4年になる。「いつか遊びに行くよ」と言ったきりになっていたのを思い出したのだ。それにしても遠いよ、出水。午後9時頃にようやく着いた。 友人とは20年来の付き合い。 お互い若く、無茶な遊びばかりしてた。20名の職員を抱え工場経営をしていた彼は、キップと羽振りがいい兄貴肌の事業家だった。しかし工場が経営破綻、本人も脳梗塞で倒れてしまう。動かない半身、崩壊する家庭、離れてゆく友だち(と思っていた人たち)、もう自分は死んだも同然だと思った、と彼は言った。 大病や被災をすると人は価値観が変わる。 僕も被災でそんな経験をした。どうしようもない事態を前に、僕は怒り、悲嘆し、絶望した…そして最後にいつか希望の灯りがともされるという事も知った…。 さて自暴自棄になった彼を、その時支えた友人やパートナーが居た。そんな人達に当たり散らしもした。やがて虚飾や見栄を捨て、自分と向かい合うと、生かされている事への感謝の念が湧き上がった。見えない明日を憂うのではなく「いま、ここ」を大切な人たちと真剣に生ききろう、そう思ったという。必死のリハビリを経て彼は立ち上がり、3年前に小さなカレーのお店を始めたのだった。 「もう誰とも会いたくないって鬱になったりしたんだよね。みんな離れてゆくし、誰も自分を分かってくれないって。でもね、そうなったからこそ、これまでの自分の愚かさに気づいた。離れていった人は、金や仕事で繋がってた人。自分をチヤホヤしてくれて、こっちも兄貴風を吹かせて気持ち良くなってた。離れていったことで、そんな自分の間違ったところを教えてもらった。 残ってくれた人は、金や仕事や見栄や飾りじゃない所で付き合ってくれてた人だったよ。彼らは自分に嫌なことも言ってくるから、よく口論にもなってた。君ともそうだったよね。でも、そんな人が本当の友なんだと分かった。」彼らを通して自分の良いところを気づかせてもらったのだ、と彼は言った。 閉店後、明かりを落としたカウンター。 「まだまだ話足りないぜ」と言われ、ふと時計を見ると午前3時を回っている。明日予定していた山行は取りやめて、日曜にゆっくり歩くとしよう。友と語らい飲む時間も、僕にとっては大切な時間だから。「よし、まだまだ飲もう!」とビール瓶に手を伸ばした辺りから記憶がないけど…(笑)。
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