活動データ
タイム
07:19
距離
13.5km
のぼり
1397m
くだり
1413m
活動詳細
すべて見る2週間前の秘境「秩父矢岳」達成後、次の週に登った武甲山。上りごたえのある人気の山ではあるものの、私の中にある”ざわつき”は収まる気配がありません。そう、秘境の次は魔境「秩父熊倉山」の存在です。道迷いによる遭難多発地帯として埼玉県警も警告する山。1426mと小振りな標高ながらも、多くの登山人を引き寄せる謎の山でもあります。 ということで行ってきました! #意外や意外、出会いの一日となりました。 ■初心者向けの魔境入り口からチャレンジ 今年9月にプチ遭難を経験している私は、登山とは「段取り8分、仕上げ2分」と十分に理解しています。ということで事前の情報収集は抜かりなく実施します。まずはエスケープルートも含めたルートを調べてみました。すると、熊倉山への道筋は複数あり、難易度順に並べると日野ルート、小畑尾根ルート(城山ルート)、宗屋敷尾根ルート、聖尾根ルートとなるようです。更には、先日の矢岳同様、東日原から酉谷山を経由し北上してたどり着くロングコースもあります。 当初は酉谷山経由でと考えていましたが、矢岳より難易度も高く、もっとも道迷い遭難が多いルートであることから、今回、行きは小畑尾根ルート、下りは最も難易度の低い日野ルートでチャレンジすることにしました。総距離も12km・CT7時間ほど、多少時間に余裕もありそうなので久しぶりにサーモス水筒にお湯をいれて山頂でゆっくりとカップラーメンを食べることにします。 ■熊倉城に思いを馳せる 白久駅は意外に近く、なんと池袋駅から1時間45分で到着です。 西武秩父駅から白久駅への電車内には、白装束のおばさま大集団が。何事かと注視していましたがどうやら終点の三峰駅から三峯神社に向かうようです。 白久駅でひとり下車し、靴紐を結び直しいざ出発です。登山口までは林道を通るルートと城山という小高い山を抜けるルートがあります。本日は多少余裕がありますので城山の方へと向かうことにしました。 線路を戻る形でしばらく道路を歩きます。そして線路を超えて山道へ突入です。途中すこしだけ「急だなぁ」という急登がありましたが、単に階段を見逃してしまい一人でヒイヒイいっていただけでした(笑)。 そうして1時間ほど歩いていくと「熊倉城跡」にたどり着きました。城山の山頂は平らになっており、正に「城がありました感」が満載です。空堀の跡なども残っており、当時の様子もはっきりとわかります。 ※ネットに当時のイメージ図が再現されていました。登る前に見ると当日が楽しみになりますね http://hya34.sakura.ne.jp/titibu/kumakurazyou/kumakuraikou.html 熊倉城跡を下るとすぐに熊倉山登山口へとたどり着きました。 ■岩場の落とし穴には要注意!(写真参照) 一旦林道に出て、少し歩くと登山口(小畑尾根ルート)にたどり着きます。 登山口にはおびただしい数の警告看板が備え付けられており、魔境へのチャレンジを否応なく闘志をかき立てられます。熊、熊、スズメバチ、通行止め、道迷い、そして「山ではクレジットカードは使えません」という警告文。慌てて後ろポケットに入れっぱなしだったカードケースをリュックにしまいました^^; そんな看板を前に、道路脇の縁石に座り、靴紐を結び直し、熊鈴を2つ付け、いつでも大音量の音楽を流せるように小型スピーカーの電源を入れ、最後に早めのエネルギー補給ということでくるみ餅を食します。 『いよいよ魔境へ突入か…』 時間は11時丁度、スタートしてから一時間半が経ったところでした。 まず最初に出会うのが「急登九十九折」試練の間です。 これが地味にきつい。平らな斜面を延々と登っていきます。すぐにアキレス腱が伸び切ってふくらはぎにダメージが蓄積されていきます。この日は湿気が少なかったため足の踏ん張りは問題ありませんでしたが、雨の日などは滑ってしまい苦労しそうです。足元が岩場や木の根などが適度にある方が、上りは楽ですよね。ただ、唯一の救いは、万が一足を滑らせて滑落しても、落ち葉の絨毯を転がるだけなので大きな怪我はなさそうです。多少気持ちは軽く、足元に注意しながら一歩一歩登っていきます。 道は明瞭で迷うところはほとんどありません。また、所々にピンクテープもあり、魔境とは言え人の優しさを随所に感じます。ちょっと安心しました。 『今日はこんな感じで、ずっと一人で歩いていくのかな…』 「ドウモ、コニチハ〜」 なんと、目の前から外国の方が現れ、私に挨拶してきました。慌てて挨拶を交わします。見た感じ英国紳士風のかたが山頂から降りてきます。『え?この時間に降りてくるの?』。一体どこから何時に登ればこんな早い時間に下ることができるのでしょうか。車で来た?いえいえ登山口には何も止まっていなかったし…。もう魔界から来たとしか思えません。迷い込まないように注意です。英国紳士の後ろ姿(写真参照)を見ながら、あのリュックはどこのメーカーだろうと思考を巡らせ、先に進むのでした。 暫く行くと尾根道に出ます。そこからは「無限岩場超え」試練の間の始まりです。 等高線を見るとわかりますが、両側はかなり切り立った崖になっています。先ほどと異なり、落ちたらただでは済みそうにありません。幅2mくらいの痩せ尾根の岩場を慎重に超えていきます。途中、とても大きな岩が道を塞いでいますが、よく見ると右側に赤いペンキで巻道の表示があります(写真参照)。慌てずに回り込んで進みます。 岩場のあたりから赤や黄色の紅葉が広がってきました。『いいタイミングで来れたなあ』と見上げていると、なんと足元に落とし穴が。12時41分の写真を参照してください。痩せ尾根を支えていた木の根を誰かが踏み抜いたのでしょうか、なんと尾根道の脇に「穴」が空いています。うっかり歩を進めてしまっては大変です。皆さんお気を付けください。 足元の岩場に集中し、時たま頭上の紅葉に目を休めながら暫く進むと、いよいよ山頂への最後の急登までたどり着きました。 結構な坂ではありますが、それなりに木や岩などの手がかり足がかりがあるため、上りであればさほど苦もなく登れます(もちろんしんどいですが^^;)。ゆっくり登っていると、なんと上から本日二人目の人が降りてきます。 『どちらから登られたんですか・・?聖尾根とか日野尾根ですか?』 「いや、日野の向こう側の〜」 うまく聞こえなかったのですが、おそらくは宗屋敷尾根と言っていたような。ものすごい上手な足運びでひょいひょい降りていく姿を見ながら『その人間離れしたスピードを見るに、もはや人間を超えた魔人だろう』。全身真っ青だったので青の魔人として記憶に刻むことにします。「もう少しですよ。お気をつけて」と最後に声をかけていただきました。青の魔人は人間の味方です。 ■山頂で魔人もとい魔神に出会う そこから10分ほどでついに山頂へとたどり着きました! 山頂は眺望はあまりないものの全体的に細長くスペースが開けています。手前には事前情報の通り「ストーンヘンジに囲まれた三角点」が目に入ります。いや、本当にそんな感じなんです(写真参照)。これは日々、相当なパワーが三角点に注ぎ込まれていると思慮します(笑)。 ストーンヘンジの奥には茶色に錆びた「熊倉山」の看板が経っており、魔境の雰囲気を漂わせています。その先へ進むと右側には祠があります。真新しいお酒が添えられており、誰かが定期的にお参りをしているようです。軽く祠に頭を下げ、その先の小岩に座りランチの用意をすることにしました。 1か月ぶりに持ってきたオレンジのサーモス水筒を開けて、お気に入りのチーズカレーヌードルの準備をします。お湯を注ごうと水筒を手荷物と『アツ!』。何やらすごく熱い。高性能だなぁくらいに思い、カップに注ぐと、なんだか様子が違います。 『逆にぬるい・・?』 そうです。以前矢岳へ行く途中の崖で格闘したときに凹んでしまったのですが、なんと保温性能をほとんど失ってしまっているようでした。その温度は、お風呂より少し熱いくらいです。いや、水筒の外側の方が熱いw 『このぬるいお湯をカップヌードルに入れたらどうなるんだろう』 素朴な疑問が頭をよぎります。結果としては「時間をかければそれなりに麺は柔らかくなる」という、すごくまっとうな形になりましたが、まあ、試せて良かったです。時間をかければ水でも食べられそうです。 そんなぬるいカップヌードルを手に持ち、山頂をうろうろ散策していたところ、なんと向こうから一人のおじさんが登ってきました。見ていると、祠に手を合わせ祈りを捧げております。本日3人目の魔人登場です。 『どちらから登られたんですか?』 「ん?そうだね、聖尾根っぽい道で来たんだよね」 うーん、奥深い回答。聖尾根ではないという。 『熊倉山にはよく登られるんですか?』 「そうだね、100回は登ったかな」 なんと! 『100回ですか!?』とかぶせ気味に聞いたところ「うん、まあそれくらいは来てるかな。毎月1回、10年前くらいからは来てるから」とこれまた時間軸が相当長い。もう魔人ではなく「魔神」。魔境で魔神に出会いました。ちなみにリュックはdeuterで、かなり使いこまれてました。せっかくなのでお話を。 「矢岳に登ったんだ、2年ちょっとで大したものだよね。でも山頂に何にもなかったでしょう。私なんかだと雨が振りそうな時は矢岳でいいかなんて思っちゃうね」 「熊倉山から酉谷山の方に30分くらい行くと白岩というところがあるんだけど、そこが眺めが良くておすすめですよ。え?熊?100回も登っているけど見たことはないですね。あそこの川の向こうにいるんだよね」 「毎年4月29日はね、この山頂で開山式をやるんですよ。秩父警察署長や神主さんも来て100人くらい集まるんですよ。その時期にヤシオツツジが見頃になるのでいいですよ。ちなみに神主さんはあそこで着替えるんだよね」 10分くらいでしょうか、ひとしきりお話し、いろいろと教えていただきました。最後に熊倉山で唯一眺望の良い秘密の場所を教えてもらい(祠の裏側です)、下山されていきました。「山頂でめったに人に会わないね。会ってもみんな知り合いだし」と言っていましたので、他にも魔神さんは複数いらっしゃるようです^^ #後日ヤマレコで魔神さんを見つけました。山頂で珍しく人に会ったと記載が。記憶に残していただけててなんだかうれしいです^^ ■渡るべきか渡らざるべきか… 気がつけば山頂に一時間以上滞在してしまいました。 次は酉谷山から来よう!と決意し、下山することにしました。帰りは一番簡単な日野ルートで帰ります。少しだけ来た道を戻り、日野への分岐に差し掛かります。 日野ルートは極めて平和な道でした。ほぼ足元は平らな道で、延々と下っていきます。途中トラロープで通行止めになっている箇所がいくつかあり、迷い込んでしまうことはほとんどないと思われます。多発する遭難に対し、徹底的に対策を実施している印象でした。警察や自治体の皆さん、本当にお疲れ様です(感謝)。 終盤に差し掛かると渓谷沿いの道になります。何度か渓谷を行ったり来たり(多分5回)するのですが、ほぼすべての橋が朽ち果てています。山頂の魔神さんも「日野コースは安全だけど橋だけは気をつけた方がいいですよ」とおっしゃってた通りです。 最初の橋は見事に崩壊しており、川の中をジャバジャバ進みます。その後、橋を慎重に渡ってみたり、ジャバジャバ進んだりと臨機応変に進むのですが、最後の最後、林道に合流するところで高さのある橋を避けて川沿いを移動する際見事に腐った木の枝を掴んでしまい、左足がびしょびしょになりました。靴下まで濡れたのはこの2年で初めてでしたw その後、無事に林道へとたどり着き、一時間ほど道路を歩き、無事に武州日野駅へとたどり着きました。 ■正に秩父のB級グルメ そしていつもの祭りの湯へと直行し、寝湯を堪能し、フードコートでご飯を食べようとするも、なんと次のレッドアロー号出発まで10分。駅員さんに『駅弁ってあるんですか?』と聞くも「入って左側の売店に残っていれば売っているよ」と言われ見てみるも、もちろん完売。土産物屋でまんじゅうでも購入しようかと悩みましたが、僅差で自宅近くのラーメン屋が判定勝ちとなり、そのまま電車に乗り込むのでした。 熊倉山を「秩父のB級グルメ」と書いてあるブログがありましたが、まさにその通りだと思いました。 ・難易度に応じた様々なルート(尾根)がある ・2時間程度と程よい時間で登れる ・山頂は広めの空間があり、ゆったりと一息入れられる ・全く人がいないわけではなく、数名とはすれ違う(ので万が一も安心?) ・おなじみさんは皆知り合いで、飲み仲間の様子 ・熊は出ない(らしい?) 富士山が見えるわけではなく、山頂にだんごが美味しい茶屋があるわけでもなく、特筆した魅力のある山ではないのですが、個人的に「また来たい」と素直に思いました 次は、開山式の日に、誰かを誘って聖尾根から登っていけるよう、これから半年間、山行に励みたいと思います。 では! #後日、全く同じオレンジの水筒を買いました。次は熱々のラーメンが食べられますように。 ▼秩父「秘境・魔境シリーズ」四部作はこちら 1.2018年9月8日:矢岳断念、烏帽子谷へ、霧、熊、そして私は遭難する https://yamap.co.jp/activity/2352183 2.2018年10月13日:秘境「秩父矢岳」再チャレンジ、無事達成! https://yamap.co.jp/activity/2515813 3.2018年10月28日:魔境「秩父熊倉山」は静寂に包まれ ※本レポート 4.2018年11月10日:【完結編】魔界「酉谷山から熊倉山」へ潜入 https://yamap.co.jp/activity/2675732
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